不純物の発見



「…なに、これ」

部室に入ると、何やら足元には、やけに肌色面積の多いパッケージ。
せっかく爽やかな気分で教室を出てきたっていうのに、これでが台無しになった。
黒く目線の入った、たわわなお胸のお姉さんの写る表紙には、デカデカと『特撮!盗撮!激しく揺れる巨乳の園』の文字が書かれていた。
私がそれを拾い上げると、皆が一斉に「ヤバイ」と言った様子で目を逸らした。
へぇ?
目を合わせないってことは、お前ら、これ、身に覚えがあるんだな?
ふーーーん。

「おいコラ…部室に何持ち込んでんのあんたら…ん?」

私の言葉に、一哉は反論しようと立ち上がった。
が、健ちゃんに肩を掴まれ制止。
そうだよ、それでいいんだよ。
さっすが健ちゃんは分かってるよね。
康次郎は目を瞑って首を横に振り、ザキは落胆の表情で膝を着いている。
他も同様。
一年は少し可哀想だけど、いや、同情なんてしないよ。
残り少ない三年生には私はよく慣れているし、気にもしてやらない。
はは、皆、潔くっていいね。
そして、私は出来る限り敵意を出さないようにして、全力の笑顔を作り出し、皆に告げた。

「あるもん全部出せバカ共」

すると各々がゆっくりと、暗い表情で自らのロッカーを開け始める。
そりゃあ皆は思春期の男の子なんだし、エッチなものに興味があるのもわかるよ?
それが当たり前のことだよ。
でもね、それを青春の拠点と言っても過言ではない 部室 に持ち込むことは、うん、許せないよね。
それも、女マネがいるのに。
女マネも入ってくるところに、それを放置しておくなんて、全くどうかしてる。
何より真っ先に出てきたものが、いわゆる巨乳ものである ということが、あんたたちの一番の敗因だよ。
巨乳好きは総じて滅べ。



「…お前ら、何やってんだ?」

しばらくすると、部長である花宮が遅れてやってきた。
仕方がないので証拠品をチラつかせながら説明をすると、納得したようだった。

「ちょうどよかった、花宮。皆、今ロッカーをお片づけ してるんだよね」
「なるほどな」
「花宮も持ってんの」
「あるわけねーだろ、なんなら俺のロッカー見てみるか」
「大丈夫、今その呆れ顔で分かったから」

そして一言。

「これはあいつらが悪りーわ」
「でしょ?隠すならきちんと隠せってね」
「バカ共め…」

ため息を吐く花宮。
まあ、花宮は買ってまで見なそうだしね、そういうの。
…代わりに、家のパソコンの履歴とか見たら凄かったりして、なーんて。
あえて探りは入れないけど。

「これで全部?」
「うん、そう」

健ちゃんが頷く。
私の前にはずらずらと並ぶいかがわしいDVDや雑誌の数々。
出てきたのは主に妹物、ソフトSMもの、女子高生ものなどなど…
いや、あんたらまだ高校生なのに女子高生ものとか何に希少価値を感じたわけ。
適当に一枚とると、康次郎が立ち上がった。
他の皆も驚いた様子。
え、なに。
表紙を確かめようとすると、次の瞬間には、もう手元にDVDは無かった。

「ちょっと何?そんなに必死に隠す?」
「いや、これは、その…」
「何」
「特にこれは、うん、あんまり、なまえは見ない方がいいと思うんだ」

康次郎の必死の言い訳に、全員が全員頷き、または目を逸らした。
しかし、ダメだと言われたらしたくなるのが人間ってもんで。
そんなに隠されると確かめたくなる。

「いいから見せなよ」
「あ、っ」

康次郎を勢いで押し倒して跨り、それを素早く手から奪い取る。
表紙は暗い雰囲気で、ユニフォームを着た数人の男と、制服の女子が写っていた。
肝心のタイトルは『実録 サッカー部のマネージャーを選手が犯す』…
その瞬間、場の空気が凍りついた。

「なに、これ」
「いや」
「いや じゃないよね」
「…はい」

すごくやっちまった感 の漂う表情で、おとなしく返事をする康次郎。
そうだね、誤魔化しはきかないよね。
そして、先ほど奪い取ったにロッカーに手が当たってしまったせいか、上から何やら、幾つか連なった薄紫の小袋が落ちてきた。
持ってみると、その小袋一つ一つの中にはリングのようなものが透けて見えた。

「………」
「うわ、それダメだって!」

これを見て一哉が叫ぶ。
あー、そう。
これはあんたのコンドームなの、へぇ〜。
なぁんで部室にそんなものがあるのかなぁ、おっかしいよね〜?
っていうか、私も中々シュールだな。
制服のまんま康次郎に跨って、右手にエッチなDVD、左手に六連のコンドーム?
なんだか私が変態みたいだ。
この中に私のものなんて一つもないけど。

「や、焼き払え!」
「いやそれはやめてくれ!」
「…ほんと不純だわ」
「だって男子高校生なんだもん」
「もん じゃない」
「じゃあなまえがこのAVの代わりになるわけ?」
「触んな、汚い、死ね」
「原、頼むからそれ以上余計なことすんな」
「えー」

ああ、もう、ため息しか出ない。
そうしてその後一週間程度、私は皆に冷たい視線を送りつけたとさ。


部室からAVが出てきて というリク(りり様)
20140216



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