もしかしてだけど好きなんじゃないの



「…健ちゃん」
「なに」
「相談があるの」
「なに」
「聞いてくれる?」
「いいよ」
「そのいいよ は遠慮しますって意味なの、それとも「いいから早く言いなよ聞くから」

一昨日のお泊まり会でのこと。

「花宮を好きになったら人として終わりかな」

夜中のちょっとしたハプニングから色々あって、花宮にかっこいいと言ってしまい、挙句の果てには、こう…何て言うの?
ぎゅっとされてしまった訳なんだけど。
最後に謝られた意味はよくわかんないけど、いや、分からないって言うなら何より私の行動が分からない。
自分のことなのに。
自分のことが全く分からない。
いや、確かに花宮はかっこいいさ。
知ってるよ?よくモテるしね。
もともとイケメンなのは知ってたさ!
けれどそれとはまた違うっていうか…何て言っていいのかイマイチよくわかんないけど。
昨日のはまた別の観点からの かっこいい だったんじゃないかって思ったんだよね。

「え?」
「いやっ、うん、私が別に好きだとは言ってないよ、うん!えっと、その…友達!友達が花宮ってかっこいいよねって言ってて、そのぉ…」

そうなればまぁ、行き着く結果は限られてるって言うか。

「いや、いいよなまえ」
「へっ!?」
「なまえの話でしょ」
「な、ななな何がっ?いやちが、私じゃなくて友達の…」
「もういいからそれ。いいから正直に言ってごらん、なまえでしょ」
「……うん」
「そんな不機嫌そうな反応しなくても」

あーあ、健ちゃん鋭くてイヤんなるわ。
別に確定じゃないから。
私が花宮を好きだとか、そういうわけじゃないから。
ちょっとかっこよく見えただけの話であって、あくまで可能性の話だから。
なんて心の中で言い訳をしてみるけど、なんだか考えれば考えるほどドツボというか。
すると健ちゃんは頭を掻きながら唸る。

「まあ、そうだなぁ…別に人として終わりとまでは言わないけど、敢えて他人にオススメするような奴ではないな」
「なんと的確な」
「でもよく知った上で好きなら仕方が無いし、有る意味共感は出来るね」
「案外いいとこもあるしね」
「そうそう」
「可愛いとこもあるしね」
「いや、それはどうなんだろう」
「えっ」
「人それぞれ感想があるから」
「…うん」
「に、しても…」
「うん?」
「何で皆揃って俺のところにくんのかね、どうも。参るよ」

独り言のように呟いた健ちゃん。
え、皆って何。
健ちゃんそんなに相談受けてんの。

「ま、なまえが花宮を好きなら好きで、俺も考えるよ」
「えっ何を」
「今後の身の振り方とか」
「とか?」
「お節介を焼く箇所を増やすとか」
「なんか怖い、それ。てか健ちゃん、私別に好きだとは言ってないからね」
「はいはい」
「…ほ、ほんとだからね!」
「わかったよ」

そう言って、私の頭を撫でる健ちゃんの手は、やっぱり優しくって、大好き。

「…ねえ健ちゃん」

幸せな気分になれるし、いつだってして欲しいと思うけれど。

「ん?」

こういった温かさを花宮に求めるようになってしまったら、私は、彼を好きだと認めなくてはならないのだろうか?

「お節介、頼んじゃうかもしれない」

あーあ。
花宮のくせに。
ゲスで鬼で冷徹のくせに。
賢いのにたまにバカになるくせに。
…花宮のせいだ。

「ん、了解、と」

花宮のせいで、私は私じゃなくなってしまった。



20140213



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