無事、お風呂にも入り終えて一服。
お菓子を摘まんだりしつつ、ゲームをしたり駄弁ったりしていたら、何やかんやで時刻は23時を回っていた。
まあまだ寝ないだろうけど、とりあえず布団を敷いておこうか と言うと賛成を得たので、押し入れから敷布団とタオルケットを六組出した。
いち、にぃ、さん、しぃ、ご、ろく。
ろく?
と、私の言葉に全員が一斉に振り返る。

「え、ろく?」
「ろく…えっなんで?なにが?」
「いや…え?なまえもここで寝んの?」
「うん」
「えっ」
「はぁ?」
「ぶっ!ゲホッゲホッ」
「落ち着け古橋」
「…お前マジか?」

逆に、こんだけ勢ぞろいしてんのに、私一人で寝ろっていうのか、あんたらは。
知ってる?
そーゆーの仲間はずれっていうんだよ。
そんなん私寂しくなっちゃうよ。
わざとか、わざとなのか。
泣くよ?え、泣くよ?

「花宮ん家行った時もそーだったじゃん」
「いや、まあ、そうだけどよ…」

そうだろう。
以前にも同じことをしているっていうのに、何の問題があるんだ。
しかも男女とは言え5:1でこんだけ割合に差があれば、間違いなんてどうやったって起きるはずも無いし。
そう説明すると、なぜか、皆一斉に私から目を逸らした。
え、なに。
間違い起こる可能性あんの?
起こさない自信無いの?まじで?
いや康次郎なんかは私を好きだと言ってくれたわけで、まあ、そういう感情も無くは無いんだろうな って分かるよ。
けど…ねえ。
まさかの健ちゃんまで。

「なんか、うん、ごめん。知ってはいけないことを知ってしまった感じがする」

そう言うと、ちょっとの沈黙が。
うっわ気まずい。
何か喋らなきゃと私が焦り出すと、何やら健ちゃんが頬を掻いて、あー と行き場の無い声を漏らした。

「いや、ここで寝るのは良いんだよ、別に。ただ…」
「…ただ?」
「…その服装はやめておいた方が良いかなって」
「へ?」

健ちゃんの言葉に、皆がウンウンと頷く。
服装…服装?
私の服装にどこかおかしいところがあるだろうか。
おかしいところ、おかしいところ…
ん?…あ。あぁ。
うーんと、そういうことね。

「ごめん着替えてくるわ」
「そうしてくれ」

健ちゃんに言われるがまま、私は和室を出て、着替えるべく二階の自分の部屋を目指した。
うん、そうだよね。
いつもお風呂あがりに自分の部屋で寛いでいる時の感覚でいたけど、そうだね、いくら慣れてる人らだからって、男の前でショーパンにキャミは駄目だわ。
あと、うん。
めっちゃ普通に雑談とかしてたけど、さすがにブラジャーくらいしろ私。
死ね。さっきまでの私死ね。
やばい、思い出してすごい自己嫌悪。
まるでビッチやないかい…いや、ほんとどうしようね、皆に軽い女だと思われたら。
何というか、ため息しか出ない。



「マジ、なまえ、今日ひっさびさにド天然かましてたね」
「そうだな」
「ノーブラは無いっしょ」
「えっ」
「の、ノーブラ!?」
「なに、ザキと古橋、気付いてなかったの?」
「風呂から帰って来たなまえを一目見てからどこを見て良いか分からなくて、一切見ないようにしていたんだ」
「…俺も」
「さすが童貞だなー」
「ぐっ…お前に言われると言い返せねー」
「言い返す言葉も無い」

全員が風呂を入り終えて、最後になまえがあがってきて暫く、ゲームやら何やらをして遊んでいたわけだが。
今日ばっかりは、本当にあいつバカなんじゃねえのかと本気で思った。
多分、いや確実にいつも通りの格好だったんだろうが、俺らの前でする格好じゃないだろ。
あれは。さすがに。
ただでさえ湯上りで心なしかいつもより色っぽいというか、そんな雰囲気さえあるってのに、完全な部屋着だったろ。
ショートパンツにキャミソール。
しかもノーブラ。アホか。
しっかし全員が気が気でないというのに、あいつは気付く兆しもなかったわけで。
そのうえ、そのまま俺らとここで寝るつもりだっていうんだから、驚いた。

「瀬戸がいてよかったよな」
「そうだな」
「いやごめん代わりに謝る、あとで厳重注意しておくから、あいつ変なところでバカだから」

残念ながら、バカなのは知ってた。
多分ここにいる全員。

「まあ、ここで寝るらしいから、お前ら間違っても変な気起こすんじゃねーぞ」
「わかってるって」
「そんな気起こせば健太郎が黙ってねえ」
「え、俺?あー…うん」
「わかったって、花宮も念押すなぁ」
「特に弘と康次郎な」
「…頑張ろう」
「なっ、ね、ねーよ!!」
「顔真っ赤にして言ってんじゃねーよバァカ」
「し、してねえ!」
「うるせー」

なんてやりとりをしていると、襖がすすす と静かに開いた。
が、隙間からは何も見当たらない。
暫くすると、襖の足元の方からひょこっとなまえが顔を覗かせた。

「なにしてんだ、入れよ」
「…うん」

心なしか元気がない。
おそらく、こいつのことだから、行き過ぎなくらい反省しているのだろう。

「ん、まあそれならいいんじゃない」
「いい?」
「いい、いい。可愛い」
「うっ」
「なに?」
「健ちゃんに撃ち抜かれた」
「バカなの。珍しくしおらしいと思ったのに、すぐ立ち直るんだからさ」
「えへへ」

着替え終えたなまえは、朝顔の描かれた薄桃色の甚平を着ていた。
まあどう見ても、どう考えても、さっきよりは遥かにマシだ。
むしろ健全に可愛いとも言える。
いや、絶対本人には言わねえけど。
これならまあ、一緒に寝るのも問題無いだろう。
布団はなまえのいない間に敷き終えていたた。
そんな今、あとは誰がどこに寝るかという問題のみが残ったのだった。


またつづいた
20140213



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