お盆休みと瀬戸家



「たっだいまぁー!」
「おかえりなさーい!」

お盆休み。
それは、去年と同様、比較的長い期間両親が家へ帰ってくる時期だ。
そして今、家には何故かなまえがいて。

「あらなまえちゃん、久しぶりねぇ!やだ元気にしてた?まーた可愛くなっちゃってぇ!」
「もー、健ちゃんのママからかうのやめてよー」
「からかってないわよ?ねっ健太郎」
「うんそうだね、おかえり」
「ただいま〜」
「良い歳してすぐ抱きつくのやめて」
「もう、冷たいわね」

荷物を家に運び込むなり抱きついてくる母は相変わらず。
あまり喋ることもせず黙々と荷物を車から降ろしている父も、相変わらずのようだった。
落ち着いたところで、皆で昼食をとる。

「うわぁ、なにこれ豪華〜」
「なまえが作ったんだよ」
「そりゃそうよね、まっさか健太郎が料理するとは思ってないわよ」
「酷いな」

そうだ、なまえは今日、このために家に来たのだった。
俺の両親は隣の子ながらなまえのことも実の子のごとく可愛がってきたため、まあ、彼女にとっては軽く親みたいな感覚もあるのだろう。
両親がここを離れる時は、俺よりも悲しんでいたし。
だからこそ帰ってくる時はもてなしたいと、今日は俺の家で、ちょっとばかり豪華な昼飯を用意することにしたらしかった。

「あぁんもー美味しい!合格!」
「えへへぇ」

何が合格なのかは知らないが、褒められたことでなまえは喜んでいるらしいので、深くは気にしないでおく。
と、そこで母さんの爆弾投下。

「やっぱりもういっそ、なまえちゃんが健太郎のお嫁さんになってくれたらいいのに」

さすがに吹き出した。
久々だと思う。
ここまで不意を突かれたのは。
なまえも驚いて箸を落としていた。
それを見て何を勘違いしたのか、母さんは止まらなかった。

「え、なに?もしかして、もう二人とも付き合っちゃってるの?やだ、母さんったら」

本当に嫌だよ母さん。
違うから と弁解すると、疑るような視線を向けられてしまった。
なんだ。どんだけあんたはなまえを俺に嫁がせたいんだよ。

「ほ、ほんとに違うから…」
「ほんとにぃ〜?」
「ほんとっ!」

疑いは晴れない。
こうなったら最後の手段。

「そうだよ母さん、なまえには好きな人がいるから、あまりそういうからかい方はしないでやって」
「へっ!?」
「あら、そうなの?ごめんね〜」
「そうそう」
「け、けけけ健ちゃん!?何言って…」

何も、嘘は言っていないと思う。
なまえは自分でもよくわかっていないのかもしれないけれど、実際、なまえの あいつ に対する態度はどう見たって、恋慕のそれだ。
それを今ここで言う必要が、必ずしもあったかと聞かれれば、そうではなかったと答えるけれど。
まあ、いい機会になればいいとは思う。
そこでようやくこの話題は終了したが、なまえは終始しどろもどろだった。
そして一日の終わり、なまえにこっぴどく叱られた。
口には出さないけれど、反省はしていない。



お節介気味健ちゃんは幼馴染。
20140213



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