さくらんぼ



「さくらんぼ?」
「そ。おすそ分けしてもらったから、ちょっとで申し訳ないけど、みんなに差し入れ!」
「へー、うまいじゃん」
「うめー」
「果物っていいな、やっぱり」
「意外と古橋、甘いもん好きだよな」
「好きだ。原程じゃないが」
「俺そんな好きでもないよ?」
「毎日ガム噛んでんのはどこのどいつだって話な」
「アタシだよっ!」
「物真似とかいらねーよ気持ち悪いな」
「あ、みてみて、俺口ん中でヘタ結べんだよ」
「逆に出来ない方がおかしいだろ、ほら」
「うわ…花宮マジでお前出来ない事とかねーの?何でもやるなぁ」
「そうでもねーだろ」
「瀬戸出来る?これ」
「ん?…ハイ」
「うわ、出来てる」
「俺も出来るぞ」
「はっえーな古橋。あっザキは出来…るわけないかぁー、だってザキだもんね」
「んっだよそれ!」
「じゃーやってみ?」
「………」
「ほら出来ないじゃん」
「うっ」
「え、なになに、なにやってんの?」
「ザキだけ舌でヘタ結べないから笑ってたとこー」
「ザキだけ?」
「ん、俺らは出来るし、ほら」
「ああ」
「うわ、まじか。じゃあここにいるやつ皆キス上手いってことか」
「ザキ以外な」
「ザキ以外」
「そこまで言うこともねーだろ」
「ザキ不器用だしね」
「まあそうだけどよー…」
「ううん、皆キスうまいのかー」
「なになまえ、キスしたいの」
「一哉とは別に」
「他とはしてーのかよ」
「まあしたいというか、しても構わない感じ」
「ぶっ」
「おい花宮もなまえもそういうのやめて、古橋が今全力で吹き出した」
「聞こえてた」
「冗談だよ」
「…ジョウダン」
「逆に冗談じゃなかったらなんなの」
「本気」
「いやそういうこと聞いてんじゃなくて」
「まあ、康次郎はマジでキスとか上手そうな感じするよな」
「散々やったあとに絶対天然かますよな。ああ、うまいのか、俺は、とか言って」
「やりそー」
「お前ら俺をなんだと思ってるんだ」
「いいじゃん。花宮なんて自分が上手いのが当たり前だとか思ってるタチだよ、絶対」
「ああ、なんかわかる」
「わかるー」
「俺のイメージひっでえな」
「そう?」
「実際下手かもしれねーだろ」
「えっうそ。下手なの?」
「何なら試してみるか?」
「…康次郎をお使いください」
「え」
「ふざけんな」

20140213



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