肝を試しにいく



「え、肝試し?」
「そそ。ほら、有名な廃病院あんじゃん」

言い出しっぺは一哉だった。

「ああ…あそこか、俺も知っている」

そしてそこに、まさかの康次郎が乗っかった。

「古橋そういうの詳しそうだもんな」
「ああー、わかる」
「どういう意味だ?まぁ、確かに未確認生物だとか幽霊の類には興味はあるが。特に最近興味があるのはやはり魔の三角海域バミューダトライアン」
「まんまイメージ通り」
「だよな」
「もう少し語らせてくれても良いだろ」
「イヤだよ、絶対長いし」
「クリスタルスカルも中々」
「うるせーよ」
「あっ私もホラーとか好きだよ」
「お前ザキと一緒に叫んでたじゃん、ゲームやった時」
「苦手だけど好きなの!」
「意味わかんねー」
「ザキは苦手で嫌いだもんね」
「苦手ってわけではねぇよ!別に!ただ、まぁ、好きではねえけど…」
「かっこつけなくてもいーんだぜ?」
「いや、かっこつけてねーし!」
「ハイハイ」

そして話は盛り上がり。

「じゃあその病院行こうぜ」

と、なったのである。
ザキが本当に怖がりでないのであれば何も問題無いだろうと、一哉が言いだしたのだ。
もちろん強がりで負けず嫌いなザキは、そんな安い挑発に乗ってしまうわけで。

「あぁあいーぜ!?行くぞ、その病院!!」

一哉は少し、ザキを面白がり過ぎなのだ。
肝試しなんて、まして人が生き死にしてきた廃病院に行くなんて、絶対に良いことでは無いとは思うけれど…
まあ、その場の盛り上がりに勝てなかった私も私なのかもしれない。
康次郎も本物の心霊スポットで検証出来る なんて言っていつもより目が輝いているし。
するとその会話を聞いていた花宮がやってきて怒り出す。

「お前ら、肝試しなんて行って明日練習出れねえとか言いやがったら、一人ずつ家まで行って始末して回るからな」

お化けより何より花宮監督様の方が怖い気がしてきた。

「えーじゃあ花宮も来れば?監視役ー」
「はぁ?行くかよバァカ」
「こえーの?」
「俺はその手の挑発には乗らねえからな、弘ほどバカじゃねーから」
「んなっ!?バカって言うんじゃねーよ!」
「いやバカだろ」
「バカだね」
「ぐ…」
「あっ、そんで花宮は?来ねーの?」

食い下がる一哉。
当然のように拒否する花宮だが、やはりザキとは違って、別に怖がっている風ではないが。

「行かねーって」
「なまえ怪我とかしたらどーすんの?」
「……」
「花宮、心配じゃないの?」
「…なんだよ、なんなんだよ。なんっっでなまえで釣ろうとしてんだよ、お前は?なあ」
「いえーい、花宮来るって!」
「はぁ!?…ああわかった、行けばいいんだろ、行けば」
「来たいくせに」
「死ねバァカ」

私で釣る という意味がよく分からないけど、まあ、花宮が来るなら幽霊とか何でも勝てそうな気がしてくるから不思議だ。
向こうから逃げて行きそう。
と何やかんやで私、一哉、ザキ、康次郎、花宮というメンバーが集まったら、あと一人足りないのは。

「健ちゃ「聞いてた、行くよ」

さすが速い返事だった。
面倒くさいと言われそうな気がしてたけど、どうやら私の保護者として来るらしい。
何かあったら危ないからと。
いや、なんだその理由は!
嬉しいけどね!

「集合場所はザキん家でいー?」
「ちょっなんで俺ん家…」
「ザキん家からが一番近いし?」
「ザキおねがーい」
「…はぁぁ、わかったよ!いいよもう何でも!!」
「よし、じゃあ今日の夜10時、ザキん家集合な」
「おー」
「了解だ」

こうして、私たちは夏休みも序盤、急遽肝試しをすることになってしまったのである。

20140210



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