閑話3−1:

※44話の没部分です。
オリジナル要素高め。神様関連の話。


***


定住先を選べと言われたら、元のままがいい!って言いたくなるから、
あるいは、どこでも住めば都!って言いたくなるから、
この因果を受け入れたときと同じ思考を辿る。

『旅行先』を、探すの。

そういえば最近引きこもってることが多いし、
部活の遠征はあったけど、旅行は中学の修学旅行以来かなぁ。
観光目的だったら、異世界は物珍しさに溢れているはずだ。

本当は旅行でさえも、わざわざ異世界にいかなくたってできるものだ。
国内にも海外にも遊ぶところ、食べるところ、見所はいくらでもある。
お金もある、時間もある。いくらでも。
溢れるほどあればこそ困ることもある。

でも、国内旅行はしたくない。
仮に日本一周の旅でもしたら、実家を探したくなるでしょう?
今まで自分が住んでいたところ、学校、近所、親戚や友達の家があるはずの住所、
行ったことのある場所、縁の地、いるはずの人を 辿りたくなるでしょう?
それは、存在しようがしまいが、どういう形でもショックだと思うから。
地方を越えて遠出しようなんていう気にはならないの。

普段からも、漫画や小説・テレビ・インターネットで、
同じ作品・作者・番組・サイトを探すのが怖い。
わずかな違和感に敏感になる。

旅行するなら、
違和感を感じるとかいう次元の騒ぎじゃないくらい、
私のいた場所と理の違う世界のほうがいい。
カルチャーショックが大きければ些細な誤差は気にならないと思うから。

それに、文字通りの『異世界』に降り立ったなら、
もっと私は自分の宿運を自覚できるかもしれない。

「……佐為はどんな世界がいい?」

旅行目的の日本と理の違う異世界というところまでは決めて、
具体的に絞り込むための条件を佐為に――信頼の相棒に、求めた。
やっぱり囲碁関連のことかなぁ。
私が楽しめるだけじゃなくて、佐為も楽しめる世界だと嬉しい。

「どんな世界と言われても、私にはよくわかりません。異国ということでしょうか。」

まぁ佐為や虎次郎が生きたのはワールドワイドな時代でもないし、
ファンンタジーな異世界はぴんとこないか。

「えーっと、竹取物語のかぐや姫は月に帰ったでしょう?
そういう、ここではないどこかで、簡単に行き来できない、常識の違う世界があってね」

平行世界みたいに、よく似た世界もあるけど、
私の考える条件内の話ができればいいから、それは割愛。

「しかしあれはただの"物語"で」
「神様は物語を通じて世界を渡るんだって」
「……そういえば以前、ヒカルが人が月に行くだなんて言っていました」
「人が月に行ったのは、神様とか関係なく本当だよ」
「えぇ!?」
「あはは、今度宇宙科学館にでも行こうね」

そういうたわいもない外出をするのも、佐為にとっては楽しいかもしれない。
私にとっては馴染み深い『現代の日本』だけど、佐為にとってはまだ物珍しいことがあるはずだ。
今度遊園地でも行ってみようかな。お化け屋敷とか、楽しいと思うの。


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