籠の中の小鳥は空を飛べない。



「おい、小僧!」

元気な声で呼ばれてデミッドが窓から海を見ていた視線を向けると、扉をばんっと開けたガープが立っていた。

「あれ?ガープじいちゃん。どしたの?わざわざ僕の部屋まで」

何かじいちゃんに出し忘れてた書類とかあったかな〜?と思いながら返事をすると、ガープはズカズカと部屋の中に入ってきてどかっとソファに座るとせんべいを取り出した。


「なんじゃ。遊びに来ちゃ悪いか?ほれほれ、お前も梅干しばっか食ってないでせんべい食わんか」

歯が弱くなるぞ、とばりばりとせんべいを食べ始めたガープにやれやれとため息をつきながらデミッドは椅子から立ちあがってガープの向かいのソファに座る。



「この前の会議でガープじいちゃん寝てたでしょ」

せんべいに手を出しながらからかうように言うと、ガープはぶわっはっはっは、と笑った。

「そういうお前さんこそ鼻くそほじくって飛ばしておったくせに。どうせ話なんか全く聞いとらんかったんじゃろう」

ぅえ、嘘。この人本当は起きてたの?
じゃあ、その鼻くそがあんたの髭についたことも知ってるんじゃ…と恐る恐るガープに視線をやると、ガープはにやりと笑った。

「やってくれおったのう。どうせならわしじゃなく一番前で偉そうに話しておった奴に飛ばしてやりゃあ良かったのにのう」

「やっぱり知ってたんですか。あれはたまたまですよ。だいたい、僕が悪いんじゃありません。ガープさんの方に飛んで行った僕の鼻くそが悪いんです」

口を尖らせて反論すると、お前もとんだ大馬鹿者じゃな、とガープは憐みの目でデミッドを見た。



「だいたいですねぇ、あんな価値のない話し合いを聞くくらいだったら鼻くそほじってた方がずっとマシだと僕は思いますけどね〜」

せんべいをポリポリ齧りながら言うと、ガープはうむ、と相槌をうつ。

「しかし、わしゃてっきりドレークの議題だったからお前さんは積極的に会議に参加すると思っとったんだがのう」

「あんな、ドレークのことを全く分かってない奴らがああだこうだ勝手な議論をしているのを積極的に聞けるわけないでしょう」

気分が悪くなりましたよ、とこぼすとガープは苦笑する。

「まぁ、お前さんとドレークは本当に仲が良かったからのう。あまり気を落とすなよ」

優しく言われたガープの言葉にデミッドは溜息をつく。


「結局それを言いに来たかったんでしょ、ガープじいちゃんは。大丈夫だよ。ドレークにはドレークの考えがあるんだ。僕も僕ができることをこれからも頑張るつもりさ」

でも、心配してくれてありがとね、とにへらっと笑うと、ガープもそうか、と大きく笑ったのだった。





「ねぇ、ガープじいちゃん。世界って広い?」

ふと尋ねてみると、ガープは、なんじゃ急に、と目をぱちくりとさせた。

「しかし、まぁ、世界は広いぞ。お前さんが思うとるよりずっとな」

返された言葉に、デミッドはふぅっと息をつく。

「そっかぁ。…だからドレークは海軍を抜けたのかな」


ドレークがなぜ海軍を裏切って海賊になったかは想像するしかできないが、なんとなくそう思った。

そう思ったのは自分もその広い世界をこの目で見たいと思っているからだろうか。海軍という枠に囚われることなく自由な目で。



「僕は世界を何もわかっちゃいない。そう言われたんだ」

ぽつりと呟くと、ガープはそりゃそうだ、と頷いた。

「誰に言われたかは知らんが、お前みたいな子僧がほいほいと分かるはずがあるまい。世界は広い。多くの国と多くの人々がこの海に広がっとる。そしてそれぞれ違う考えを持っている。だからこそ、人々の間では時に“正義”が噛み合わない時もある。それでも人には譲れないもんっちゅうものがあるはずじゃ」

お前さんにもそれがあるじゃろう?とニカッと笑って言われたそれにデミッドはゆるりと笑って頷いたのだった。





《△月○日
天気:忘れた
気分:ちょっとすっきり

今日はガープ中将がわざわざ励ましに来てくれた。
鼻くそ投げたこともそんなに怒られなかった。

サカズキさんの言葉が最近頭から離れない。
ドレークは何のために海に出たんだろうか。
僕はドレークほど強くもないからここから飛び出すことも出来ずにただ窓から海を眺めているばかりなのにね。

な〜んて、少しシリアスな感じにしてみました〜。
初めてのシリアス日記!
ちょっと興奮した。

まぁ、そんな感じで今日もゆるい一日でした。

byデミッド》




―籠の中の小鳥は空を飛べない。―



[ 7/24 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -