遠い君達にメッセージを送る。


「はァ!?おま、空気になれる能力者?」

エースの大きな声に、デミッドはにへらと笑ってみせる。

「そうそう。結構気に入ってんだ〜。体を窒素に変えて浮くこともできるしねぇ」

「それで船の外に行こうとしてたってのか」

サッチも頷きながら酒を飲んでいたが、ふと気づいたようにデミッドを見る。

「あれ?でもお前、ログポース壊したんじゃなかったっけか?」

「あ、そうだった」

「じゃ、おめェ結局危なかったところってことじゃねぇか」

「そうなるねェ。ははは」

「いや、笑いごとじゃねェだろ!?」

サッチとエースのツッコミを受けながらデミッドはちらりと少し向こうで酒を飲んでいる背中に視線を向けた。

そんな些細な動きに気付いたのはサッチ。

にや、と笑って肘でデミッドをつつく。

「行ってこいよ。きちんと話して来いって。きっとマルコもお前と話したいと思ってるぜ」

「サッちゃん…」

「いや、だから、その呼び名はやめろって…」

リーゼントをへにゃっとしおらせるサッチにありがと、と笑って酒瓶を片手に、こっちに背を向けて一人で飲んでいるマルコに近づく。


「それ以上、近づくなよい」


背を向けたまま、冷たく突き放されるが構わずにデミッドはマルコの隣に腰を下ろした。

「…はぁ。てめェは相変わらず人の言うことを聞かねェな」

「あは、そんなことないよ〜。おもにマルちゃんの言うことを聞いてないだけ〜」

「…余計質悪ィじゃねェかい」

「まま。そんなこと言わずにドゾー」

未だそっぽ向いたまま溜息をつくマルコの盃に酒を注ごうとすればひょいっとかわされる。

「海軍の酒なんか飲めるかよ…」

―バチャッ

「あ」

「あ?…オイ」

ズボンを酒で濡らし、怒気をはらんだ声のマルコにデミッドは頬を膨らませてみせる。

「マルちゃんが盃を動かすからだよ!そりゃこぼれるよね。僕のせいじゃない。うん」

「子供かよい!ったく、てめぇはロクなことしねェな」

「海賊に言われちゃ世話ないよね、あはは」

「…反省もしねェよな」


そう言って立ち上がるマルコ。


「あれ?どこ行くの?」

「着替えるんだよい。ついてくんな」

「誰もマルちゃんの着替えなんて覗かないよ。自意識過剰ー」

「…そろそろ殺してやろうかい?」

「マルちゃん、目が本気」

肩をすくめてひらひらと手を振ると、もう一回深いため息をついたマルコが一瞬だけ笑った。

「お前の部下は大変そうだねい」

そう言って扉に消えていくマルコを口を開けたまま目線で追っていたデミッドはその背が見えなくなってから、ぷっと吹き出した。

「はは。なにあれ。マルちゃんなりに認めてくれたってことかな」

確かに、エミリアちゃんたちには苦労かけちゃってるかもなぁ。
未だに手配書が出回ってないってことはエミリアちゃんやモモちゃんがいろいろなんとかしてくれてんのかな。


みんな、どうしてんだろ。

ま。心配ないか。


「…僕も心配ないからね〜」


海軍で同じ夜空を見ているかもしれない仲間たちに向けて、柔らかく笑みながらデミッドは小さく呟いたのだった。



―遠い君たちにメッセージを送る。―



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