偶然というには出来過ぎていて。



「本当に一緒に来ないのか?」

真剣な顔で言われた言葉にデミッドはへらりと笑って返す。

「冗談。僕が赤髪君の船に乗ったりしたら十中八九海軍にばれちゃうじゃん」

「いいじゃねぇか。バレたら潔く海賊やれば。皆お前のこと気に入ってんだぞ」

子供のように駄々をこねるシャンクスをベンが煙草に火をつけながら諭す。

「お頭。デミッドにはデミッドの目指すものがあるんだ。無理強いをして困らせるな」

ベンに言われて渋々と引き下がるシャンクスにデミッドは思わず口元を緩める。


「お頭ー!出航の準備ができやしたぜー!」


大きな船の上から声が降ってくる。

「おう、今行く」

シャンクスは返事を返すとデミッドに向き直った。

「まぁ、やるべきことがあるんだったら仕方ねぇ。だが、お前の目指しているもんはこの時代では難しい。むしろ海軍だからこそ自分のやりたいことができないなんてこともでてくるだろう。そんときゃ、俺たちはいつでもお前を受け入れてやるからな」

二カッと笑って言われたその言葉にデミッドは相変わらずゆるい笑みを返す。

「そうだねー。海賊になるのもそんなに悪くはないかもしんない。その時はよろしく頼むよ」

「おう。男と男の約束だ」

そう言ってばさりと黒いマントを翻してシャンクスは船に乗り込む。

「野郎ども!出航だー!」

港を離れる船を見送るデミッドに向かって、船員達が手を振りながら、また会おうぜー、と叫んでいるのが見えたデミッドは苦笑してゆるりと手を上げたのだった。




「さて、僕もそろそろ出発しますか」

愉快な赤髪海賊団を見送ったデミッドは、残りの土蜘蛛海賊団を探すために自分の小舟に乗りこんだのだった。




プルプルプル プルプルプル ガチャッ

『デミッド中将。エミリアです。いろいろと報告が…』

「お。丁度良かった、エミリアちゃん。積もる話はいろいろあるんだけどさ、それよりも今困ってて」

電電虫に話しかけながらデミッドは遠い眼で果てしない水平線を見つめた。

「いろいろあってさ、ログポース壊しちゃって…今、遭難してるみたいなんだよね、僕」

あははと笑うデミッドだが、何気に事態は深刻。
小舟に乗る食料なんてたかが3日分。
既にデミッドは漂流してから4日経過していたのだった。

「どーしよー」

デミッドの危機感のない声にエミリアは呆れてしばらく声が出なかったが、はぁ、と大きくため息をついて確認をとる。

『周りに島や船は全く見当たらないのですね?』

「そーだねー……おっ?なんか、すごい勢いで走ってくる小舟発見!エミリアちゃん、またあとでね!」

デミッドはガチャンっと電電虫を切ると、大きく声を上げた。

「そこの小舟の方ー!ちょっと助けていただきたいのですがー!」

どんな構造なのか、帆をたたんだまま勢いよく海の上を走る小舟にデミッドが手を振ると、気づいてくれたのか進路を変更してこっちに近づいてきてくれる。


「どうした?漂流かぁ?」

親切に舟を寄せてくれた男の顔を見てデミッドは少し考え込む。

どうも見たことのある顔なのだ。

「おーい。どうしたんだってば」

目の前で手を振られてはっと意識を取り戻す。

「ごめんごめん。そう、ちょっと困ったことにログポースを壊しちゃって」

そう言うと、男は頷いてニッと笑う。

「そうか。残念だがこの近くに島はねぇな。近くに親父の船があるから、とりあえず一緒に来るか?」

何ともありがたいお誘い。

よろしく、と言うと、男はおうっと言ってデミッドの舟を先導するためにくるりと後ろを向いた。

その男の背中に彫られた刺れ墨に見たことのある顔。


「うわおっ!君はもしや火拳君」


思わず声にだしたデミッドを振り返ってエースはニカッと笑った。

「お。俺を知ってるのか。そいつぁ光栄だ。そういえば自己紹介がまだだったな。俺は白ひげ二番隊隊長火拳のエースだ。どうぞよろしく」

律儀にお辞儀をするエースにデミッドは笑いをもらす。


「僕はデミッド。君が火拳君なら、船はやっぱり白ひげさんとこだよね」


「おう。親父も知ってんのか。そりゃ嬉しいな」

本当に嬉しそうに笑うエースの表情に苦笑しながら、まぁね、と答えた。


赤髪の次は白ひげか…。
何とも大物の海賊団に遭遇する割合が高いもんだなぁ。


デミッドは青い空を見上げて苦笑混じりのため息をついたのだった。




ー偶然というには出来過ぎていて。ー


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