7日目

「おい…!?」

後ろで少年が驚いたような声を上げていた。
くそ、お前まじで覚えてろよ。
かっこつけてこんな危なそうな変態に無防備に背中向けてんじゃないよ。

心の中で散々悪態をつきながら、私はふらふらと数歩歩いてひざまづく。

なにこれ、痛いなあ。
頭が熱の出た時みたいにぼうっとするんだけど、これってやっぱり死ぬの?
こんなところで…。

「…んなところ、で…」

喉の奥から血の味がする。

私を撃ったスキンヘッドの男は苦々しそうに私を睨んでいる。

「くそ、邪魔しやがって。この女、お前の仲間か。こいつを殺されたくなければ動くなよ?」

男は再びピストルを構える。

せっかく助けたのに、少年は私をかばってくれているのか動こうとしない。
あんたが殺されたんじゃ、何のために私が撃たれたのか分からんでしょうが。

そう思うと、先ほどまで混乱のせいで隠れていた怒りがふつふつとわきあがってくる。

「…んとに、さ…なんなの、これ…。突然意味わからないところにきて…意味わからない男に撃たれて…」

呟きながらふらりと立ち上がる。

「おい、お前、動くんじゃねえ!」

男が慌てて私にピストルを向けなおすが、なんだか不思議とさっきまでの恐怖は全くなくなっていた。

「ほんとにさぁ、神様?とか…いるんだったらさ、これ…どうやって落とし前付けてくれるわけ?こんな変態スキンヘッドに腹撃たれて人生終了とか…死ねるわけないでしょ」

ゆらりと手を振り上げる。

「ひ、お前、なんだそれ…!お前、何者だ!」

やけに怯えている目の前の男に少しだけ違和感を感じたが、まあ、いいかとこぶしを振り下ろす。

「人様に…子供に!そんな危ないもん向けんじゃない!!」

バゴン、とやけにでかい音がして、目の前の男が消えた。
訂正。地面に埋まった。

え?なんで?私の拳骨そんなに強かったっけ?
ようやく我に返ってみて気づいた。

あれ、私、体が痛くて腕動かせないんだけど。
じゃあ、どうやってこの男を殴ったんだ?

そして、視界の端に映っているなんか白っぽいふわふわしたものってなに?

そうっと顔を横に向けて、その正体を突き止める。

「しっぽ…」

しっぽ。それ以外に表現しようのない立派な狐の尻尾が九本も、ふわふわと私のシャツから伸びているんだが。
それは私の意思通りに動いて…多分、それでこの男をぶっ叩いた、んだと思うんだけど…

「どういう、ことだ…。もう、わけわからん…」

そして、私はあっけなく意識を手放したのだった。



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