6日目
よかった。どうやらここは無人島とかではなかったらしい。
遠くに見えた小さな街らしき建造物を見つけて私はほっと胸を撫で下ろした。
青かった空が赤く染まるぐらいの時間歩いて見つけたということは、私はちょうど町の反対側の浜辺にいたんだな、と島のだいたいの大きさを整理しながら私はゆっくりと街へと歩みを進めた。
しかし、町に近づくにつれて何か異常事態が発生しているらしいことに気づく。
暗くなり始めた空にあかあかと立ち上る炎。
人の悲鳴や怒声に泣き声。
これ、もしかして、もしかしなくても、近づかない方がよかったんじゃないだろうか。
炎が燃え上がる町を目の前にして私はしみじみそう思った。
あちこちで銃声と剣戟の音が響いているこの町は明らかに異常だ。
加えて、私の目の前に立ってる強面のスキンヘッドのおじさん。
おっかしーなー、なんか見たことある顔だなー、でも私の知り合いにこんな筋肉隆々でピストルぶっ放しちゃうような変態はいない。
じゃあ、どこで見たんだったかな、とふわふわした頭で考えて、私は手をたたいた。
「300万の人だ」
さっきカモメが落とした手配書の写真そっくり。あはは。
はは。…まさかね。
「ほう。こんな小娘にまで俺のことが知れ渡っているか」
スキンヘッドおじさんがにやりと笑ってそう言い放った。
うそん。
ぼけーっとおじさんを見てた私に向かって、おじさんがピストルを私に向ける。
あれ?ピストルってなんだっけ?
あれで撃たれたら、私、死ぬんじゃない?
ああ、どうしよう、頭も体も動かない。なんか夢の中にいるみたいだ。
そのときだった。
「ぐあ!」
突然スキンヘッドおじさんが血を吐いて倒れ、その拍子に発砲された銃弾が私の頬をかすった。
なにがなんだかわからない。
倒れたスキンヘッドおじさんの後ろから現れたのは私よりも年下のような少年。
手には血まみれの刀。
なんてミスマッチ。
まだ私の思考回路はショートしたまんまらしい。
炎に照らされて、町の影が生き物みたいに踊り狂っていた。
ぼんやりと倒れた男と私の前に立っている少年を見やる私を不審そうに彼も見返してくる。
「死にたいのか?」
「え?」
突然言われた言葉に私は間抜けな声を出す。
「…それとも、あんたも海賊か?」
「海賊?」
言われた意味がよく分からない。
「なんだ、違うのか」
つまらなそうに彼は言って踵を返す。
「え、ちょっと、待って…」
引き留めようとしたとき、私はぎくりと足を止めた。
倒れていた男が上半身だけ起こして背を向けている少年を狙っていた。
待て待て待て、私。なにやってんの。なんで走ってんの。
血まみれの刀持った少年を助けるために、こんなわけのわからないところで死ぬつもり?
お願いだから、止まってよ、私…!
そして響く一発の銃声。同時に体に衝撃と、脇腹に火傷したときみたいな痛みが一瞬走った。
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