5日目

これは…

私の祈りが神様に届いたのか知らないが、時計が指す方向へ歩いた先には、果物らしきものが転がっていた。

いや、これが果物なのか私には判断しかねる。
これほど妖しさを全面に押し出した果物なんて私は初めて見るよ。

だって、ぐるぐるとした変な模様がびっしりと…!

いや、形自体は見たことのあるフルーツなんだよ?
っていっても、以前に一回しか見たことがないから本当にそれか言い切れないけど、この形は…

「ドリアン…だよね?」

強烈な匂いを発する南国のフルーツ。
とげとげした外見と匂いに、以前食べようとした時は思わずためらってしまったが、中身はおいしかった。

よし。
とりあえず中身をあけてみよう。
意外と普通に食べられるかも。

私はそこらへんの棒っきれでドリアンらしきものを叩いて中身を取り出す。

「うん。食べられそう。据え膳食わぬは男の恥って言うし。食べちゃえ」

景気よくがぶりと私はドリアンらしきものにかぶりついた…



「まっずぅうう!!」

半端ない!
ほんとに半端ない。
食べ物じゃなかったよ、これ。ってくらいにまずかった。

とりあえず、私は涙を流しながら必死で口の中のドリアンを飲みこんだ。

「くそ、このやろー。このあんぽんたんめ」

腹いせに残りのドリアンに向かって暴言を吐いてみたが、むなしくなってやめた。

あまりの強烈なまずさに空腹を忘れた私は、再び懐中時計を見る。

もし、針がここを指してたなら次に行くべき場所をまた示してるかもしれない。

しかし、神様はよほど私のことが嫌いらしい。

懐中時計は壊れたようにぐるぐる針が回っていた。

要するに、後は自分でどうにかしろってか。


はぁ、とため息をついて私は立ち上がる。

とりあえず、この海岸沿いを歩いて島の形を確認しよう。
無人島だったらそれまでだけど、運が良ければ町が見つかるかも知れない。

よし!と自分に気合を入れて、私は再び歩き出した。



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