3日目


本当によかったのかなぁ。

店から出て、手にしたペンダントを見る。


ま、本人が良いって言うんだし。うん。

あんまり深く考えるのは苦手だ。

もらったんだからそれでいっか。

うんうん、と一人路地裏で納得して、早速ペンダントを首にかける。

少しズシッとした重みが首に加わる。
それさえもなんだかしっくりくるような、不思議な感覚。
それが嬉しくって、私はさっきよりも少し早いペースで再び路地裏を走り出した。

あ、少し先にいつものコースである大通りが見えた。

この場所覚えておかなくっちゃな。

そんなことを思いながら私は路地裏を抜けた。


…え?



路地裏を抜けたらいつもの大通りがあるはずで…

さっきまでその景色が見えていたはずなのに。

今私の足元の感触はアスファルトじゃなくってさらさらとした砂。

目の前には真っ青な海。

慌てて後ろを振り向くと、そこは薄暗い路地裏じゃなくって生い茂る草にたくさんの木々。
要するに、森。


…はい?

ないないない。
ありえないって。

なんていうの、こういうの。
どっか飛ばされちゃう、現実じゃありえない現象。
なんか、スリッパ…じゃなくてスリップ…もちがくて

…トリップ?



とりあえず、これが現実だとしたらやることは一つ。


「神様のバカヤロー!!」


海に向かって大きく叫んで少し息を切らせながら私はへたりとその場に座り込んだ。

わけがわからない。

イヤホンからは相変わらず音楽が流れてくる。

いつものように起きて、いつものように走り出して…。

いつもとちょっと違ったのは、路地裏に入って不思議な雑貨屋さんを見つけて…このペンダントをもらったこと。

首から下げたペンダントを見た私はあることに気づいて慌てて蓋をあける。

「嘘…。さっきまで12時を指したまま動かなかったのに…」

時計の針は今度は2時10分を指していた。

直ったわけではない。

だって秒針は相変わらず止まったままだったから。



突然のトリップに、突然動いた動かない時計。

さて、何から考えればいいのやら。



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