27日目


「でも、そうね。実際に生き抜くためには私には足りないものもたくさんあることに気付いたわ。あなたのおかげでね」

皮肉たっぷりに言うが、サフェリアさんは飄々と笑う。

「お役に立てたようで何よりだわ。そうね、ユウナちゃんに今圧倒的に足りないものは情報と戦い方かしら。情報は私が補うにしても、戦い方や能力の使い方については特訓した方がいいわね」

「言われなくてもそのつもりよ。あなたやライドには修行に付き合ってもらうからよろしくね」

その言葉にライドもサフェリアさんもしっかりと頷いてくれた。





「さて、あとはニィナのことが知りたいんだけど」

私の疑問に答えたのはライドだった。

「ニィナは、人魚のハーフだ」

「人魚、もいるのね、やっぱり」

聞けば、ライドは頷く。

「ああ、偉大なる航路に人魚が住んでいるらしい。彼らは成人すると尾ひれを二本の足に変えることができるらしいが、ニィナはハーフだから生まれたときから陸の上では足、水中では尾ひれになることができるんだ」

なるほど、と頷く私にライドは神妙に続ける。

「でもな、反吐が出るような話だが、人魚っていうのは珍しい種族で高値で取引されるらしい。特にニィナは珍しい古代魚シーラカンスの人魚のハーフだから、生まれてすぐ人さらいに連れ去られ、奴隷にされた」

本当に反吐が出るような話に私は露骨に顔をしかめた。
奴隷、というものは元の世界ではほぼ見ることはなかったが、その扱いがまともでないのは明らかだった。

「あの子、前にいたところからライドに助けてもらったって言っていた」

私の言葉にライドは苦々し気に頷く。

「ああ。俺たちだって運がよかったんだ。たまたま俺たちが乗っていた商船が海賊に襲われてな。どさくさに紛れて逃げ出したんだ。今でも、奴隷だったころの夢を見る。ニィナも夜になるとうなされる」

ライドの言葉に、夜震えているニィナの姿が思い起こされた。
夜が怖いとニィナが訴えてきた日から一緒に寝るようにしているから、ニィナが夜にうなれることはよく知っている。

「ねぇ、さっき言ってた"ひとつなぎの大秘宝"ってさ、この世界を変えられるくらいすごいお宝なのかしら」

聞けば、サフェリアさんもライドも驚いたように私を見る。

「奴隷制度、気に入らないわ。"ひとつなぎの大秘宝"見つけて、海賊王になって、この世界を変えてやりたい」

もうニィナがうなされずにすむように。

「ユウナちゃんが"ひとつなぎの大秘宝"を見つけたいって言うなんてちょっと意外だったわ」

「いや、それでこそユウナだ。そうこなくっちゃ!よっしょ!俄然やる気出てきたぜ!目指せ"ひとつなぎの大秘宝"、目指せ海賊王!」

新たな目標を胸に、再度強くなると決めた夜だった。





[ 27/29 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -