25日目
「やだ」
船に乗せてたサフェリアさんに言われたユウナが秒で出した結論は拒否。
「えー!なんでよー!」
ガッツポーズをするライドとは裏腹に、不満そうに声を上げるサフェリアさん。
「なんでって…そりゃ、あんたがかわいいニィナにまで危害が及ぶような真似をしたからでしょ」
「だから謝ったじゃない。悪かったわよ。本気で貴方たちを傷つける気は無かったの。それにあなたたちが探しているもの…なんだったかしら?」
「…少なくとも女装趣味の変態ではない」
「あらやだ!私は探しているものを聞いてるのよぉ。料理の腕が立つ…ついでに腕っ節も立つコックさん、だったかしら?」
「あんた、なんでそれを…!」
少なくともサフェリアさんに対してこの話をしたことはない。
顔をしかめてサフェリアさんを見ると、怪しげに彼は笑った。
「まだ名も無き子どもばかりの海賊団の船長ユウナちゃん?あるときはマジシャン、あるときは腕の立つ情報屋…そしてその本当の姿は人気料理店のコックさん!こんな人材、欲しくないかしら?」
「…………」
長い沈黙ののち、はぁと一つため息をつく。
「ユウナ!」
咎めるように声をあげたライドを手で制し、私はサフェリアさんを見る。
「あんたを信頼できる証拠は?」
「あら。信頼という目に見えぬものを目に見える形で証明すること自体ナンセンスだと思わない?あなた達自身の信頼の証拠は絆という目に見えないものに支えられてると思うのだけど」
でも、と続ける。
「ユウナちゃんがどうしてもというのなら、腕でも足でも切り落としたっていいわ」
どう?とウインクをするサフェリアさんに再びため息をつく。
「わかったわ。あなたの持ってる全ての情報の開示と提供。これを約束してくれるなら船に乗せる」
私にはまだ圧倒的に情報が少なすぎる。
ユウナ自身の9本の尻尾や能力、ニィナが人魚になったこと。海で力が入らない理由。
おそらくこの危険な世界で情報量の少なさは致命的だ。
「待てよ、ユウナ!怪しすぎるだろこいつ!」
納得がいかないと食ってかかるライドに私は振り向く。
「なら、ライド。あんたが見極めなさい。これから三ヶ月間サフェリアさんの行動を見て、あんたがそれでも信頼できないと思ったなら、そのときもう一度考えるわ」
その言葉に、ライドはぐっと詰まる。
「あら、かわいいぼうや、よろしくね」
「うるせー!おカマ野郎!絶対三ヶ月後船から降ろしてやる!」
投げキッスを送るサフェリアさんに、ライドは猫のように威嚇するが、彼には全くこたえてないみたいだ。
「あ、そうそう、言っておくけど私はオカマじゃないのよ。ただの女装が好きな身も心も大人の男なのでそこらへんもよろしく」
「尚たちが悪いわ!ただの変態じゃねぇか!」
戦う前とちょっぴり言ってることが違う…。
そんなサフェリアさんに律儀にツッコミを入れるライドを見ながら、案外こいつら仲良くやれるんじゃないかと思った私でした。
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