24日目

「……!!…ろ!」

「……よ、…もの」

誰かが言い争うような声が頭上で響く。
あぁ、もう。またリックとスミスが喧嘩してんのか。争いになったらじゃんけんで決めろと言っておいたのに。

全く、と開けようとした瞼がなかなか開かなくて不思議に思う。
すごい身体中が疲れている感じがするし、なんか寒い。

頑張ってゆっくりと開けられた視界に入ったのは美しい星空と心配そうに覗き込むニーチェの顔だった。

「ニー、チェ…?」

あれ、何があったんだっけ。ここはどこだ。

眠る前の記憶がぼんやりとしている。

「せんちょ…!よかった…!」

大きな丸い目に涙を浮かべるニーチェの頭をとりあえずポンポン、と撫でて、状況を把握するために首を巡らす。


「ほんとお前今すぐ殺してやる!逃げんな!」

「いやよぉ、殺すっていってる相手の前で止まるおバカさんなんていないわよ。あら、でもあなたならやりそうねぇ。あなたどう見てもおばかさんだもの」

怒りの形相で刀を振り回すライドとサフェリアさんを見て、全てが鮮明に思い出された。

「あんたたち、何してんの…」

疲労のためか、なかなかいうことを聞かない体をなんとか起こして、呆れたように声をかければライドがばっとこちらを振り向く。

「ユウナ…!!よかった!目が覚めたんだな!」

サフェリアさんに向けていた殺気を瞬時に収めてこちらへかけて来る姿はどう見ても忠犬ハチ公。

よーしよし、とやってきたライドの頭をぐしゃぐしゃと撫でてやると嬉しそうに目を細めるもんだから余計に。

「で?サフェリアさん、あなた結局何がしたかったの?」

ライドに追いかけられなくなったサフェリアさんに尋ねれば、少しばつが悪そうに肩をすくめた。

「悪かったわね。ちょっとあなたの能力に興味があったの。私が探しているものと似てたから…」

「だったらおとなしくそう言ってくれればよかったのに」

呆れて言えばサフェリアさんはだってぇ、と腰をくねらせる。

「ユウナちゃんがあまりにも私の好みすぎたから…意地悪したくなっちゃって」

語尾に確実にハートが見えるような調子の内容に背筋がぞわりと粟立つ。

「てめぇ、気色悪ィことをユウナに言ってんじゃねぇぞ」

今にもサフェリアさんに噛みつきそうなライドが唸る。

「やだ、私本気なのよ?最初は見た目だけだったんだけど…さっきまで戦っていた相手を迷わず助かるユウナちゃんに本当に惚れちゃったの!」

そう言ってサフェリアさんがうっとりと私を見つめる。

「ねぇ、お願い、ユウナちゃん。私もあなたの船に乗せて?」

「え…」

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