15日目


「というわけで、ちびっこ諸君。何故か船長は狐になれるようになったというわけだ」

話し終えてから、私は頭に手をやる。

あんた達がどうして狐になったのか訳を知りたいと言うから話してやったというのに…

「さっきから私の尻尾で遊んでばかりいて、聞いちゃいねえ!」

そう、今現在進行中で何故か狐になってしまった私の立派な九本の尻尾は子供達に弄ばれている。盛大に。

「船長のしっぽ!ふっかーふかー!」

「おいしそー!」

「あ、こら、私の尻尾の上で寝るんじゃない!あんたは噛むな!痛いでしょーが!」

普通の狐よりだいぶ大きな体のエレガントな私のしっぽは子供達には格好の獲物だったみたいで。

どうやら、子供になついてもらうことはできたようです、お母さん。




「さて、ちびっこ諸君。気はすんだかな?…ああ、私の尻尾の上で寝ちゃったスミスくんはそっとしといてあげてね。…はい。ということで、とりあえず、もうそろそろ島につくそうです」

私が発表すれば、子供達は顔をぱあっと輝かせる。
あの島からほとんど出たことのないこの子達にとってはそりゃもう楽しみなことこの上ないだろう。
それは理解できる。

だが。

「どうやら、次の島、かなーり治安が悪いそうです」

言えば、怯える…なんてことはせずに更に顔を輝かせる子供達。

「せんちょー、カチコミしてもいーい?」

「うん、ちょっと黙っててね、アリトンくん。愛らしい君にそんな物騒な言葉を教えた犯人を突き止めるから。…はい、そこで目を泳がせているライドくんはあとで私のところへくるように」

ほんとに、頭痛くなってくるぜ。
なんだってこんなにバイオレンスな子供達ばかりなの。

「とりあえず、島についたら私とライドとユグ以外は船で待機。私たちが情報集めてからもう一度ここで今後の予定を立てるから、絶対に勝手に外に出ないように」

言えば、つまんなーいとほっぺを膨らませる生意気なアリトンくんに私は笑顔を向ける。

「アリトンくん、約束守らなければ今日の夕飯人参のグラッセにするから」

人参嫌いなアリトンくんにそういえば、彼はあっという間に態度を豹変させて何度もうなづく。

それに満足したとき、ライドが大きく声をあげた。

「島が見えたぞー!」


あがる歓声。
ひときわ強い風が船の帆をいっぱいに膨らませていた。



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