14日目

馬鹿はおいといて、私は自分で考えることにした。

うーん。確かに、あの夜、確かに私のケツには尻尾が生えていた。
あれのおかげで強面スキンヘッドの変態を倒せたんだから、間違いなく戦力になるはず。

正直、今の私は強くなるんだったら藁にでもすがりたい気持ちだった。
例え、自分の体から変なものが生えたとしても。

だから、もう一度…いや、自由自在にしっぽが出せるようにしなければ。
なんとしても。
私はあの夜の出来事を思い出そうと目を閉じる。

まぶたの裏を見つめれば、今でもありありと思い浮かべることのできるあの光景。
暗くなった空に赤々と揺らめく炎。私に向けられる黒い銃口。赤く濡れる刃。
耳をつんざく銃口。体に走る痛みと熱。
黒いジャージに流れる赤い血。
赤と黒が、ぐるぐると、ぐるぐると、まわる。

あつい。からだが、あつい。

どろどろに解けた赤と黒が体の内を焦がすように燃え広がる。

あれ、なんか、身体が変だ…

「ユウナ?、おい、ユウナ!?」

焦ったようなライドの声がやけに遠くに聞こえる。

目が開かない。いや、開いてる?
この光景は、燃え盛る黒い炎は、幻?
それとも…


なん、だ、これ。
私、どうなってるの。

痛い、熱い…苦しい…!

その時だった。

胸のあたり…そう、確かあの髑髏のペンダントがあるあたりが大きく脈打った。

まるで、私を呼んでいるかのように。

感覚のない手で、それでも脈打つそれをぎゅっと握りしめた時、微かに声が聞こえた気がした。
子供の、泣くような声が。

すごく、悲しそうで。
とても、懐かしい声で。

私の脳内に春の夕焼けと、一面に咲くタンポポの花の景色がフラッシュバックした。

右手に持った綿帽子のタンポポ。

誰もいない砂場。

胸が、張り裂けるくらい、痛かった。

ねえ、私が、守るから、泣かないで…!!

ペンダントを握りしめ、心の中で叫んだ瞬間だった。

ーありがとう


ペンダントがすすり泣きの中で、それでもはっきりとそう、言った。


そして、ああ、これはなんだろう。
さっきから見ているのは白昼夢なのだろうか。
身の内を焦がしていた炎が小さく、小さく凝縮していって、何かの形を形作った。
そう、それは、まさに。

(狐…)

鋭い双眸でこちらをじっと見つめる白い狐。
ただの狐ではないことはそのしっぽが一本ではないことから容易に想像がつく。

ものを言わない狐の目は、言葉よりも雄弁に私に話しかけていた。

ー力が、欲しいか?

欲しい。
今度こそ、守れるように。

もう二度と、失わないように。

そして、僅か頷いた狐は私の身体の中へと消えて行ったのだった。


[ 14/29 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -