12日目
「えーっと。これで全員?」
洞窟に集まった子供たちを見渡して聞けば、みんな一斉に頷く。
「じゃあ、とりあえず自己紹介でもしようかな。私はユウナ。まだ細かい状況が飲み込めないけど、あんた等の船長とやらになることになったんでよろしく」
言えば、さっきまで泣いてたニィナもその他のちびっこもぱちぱちと拍手してくれる。
なんだ、いい子たちじゃないか。
「それで、どうやらあんたたち、海賊になりたいとのことで。船長として、私もいろいろ考えてみました。その結果!あんたたちに伝えなきゃいけないことがいくつかあるので耳くそと鼻くそかっぽじってよく聞くように」
言えば、一斉に耳くそと鼻くそをほじくりだす子供たち。
他の子供はともかく、女の子のニィナにだけは謝ってその行為をやめさせた。
「私が船長になるには条件がある。これを約束しないと私は誰が何と言おうと船長やりませんので悪しからず。ひとつ!船長である私の言葉には従うこと。ふたつ!出来るだけ人は殺さない。みっつ!絶対に死なない。以上!文句あるやつは机を叩いて異議あり!と言いなさい」
正直、海賊をやりたいというからには、人を殺すななんて条件は無茶だといわれると思っていたけど、子供に人殺しをさせることだけは、私にはできない。
しかし。
ぱちぱちぱち、とさっきの自己紹介の時よりも大きな拍手と歓声が洞窟の中に響く。
みんな、きらきらとした目で私を見ていた。
あーあ、どうすんだよ私。こんな偉そうなこと言ってこの子達守れるほど強くもないのにさ。むしろこんな危険そうな世界で自分の身だって守れるのかわかりゃしないんだ。なのに。この目を見て、思っちゃったんだよなあ。
命かけてでも守ってやりたいって。
ここに、私、ユウナ率いる、なんとも前途不安な海賊団、『子守り海賊団(仮)』が結成されたのだった。
そのあとは丁度私のおなかの虫が鳴いたのをきっかけにみんなで昼ごはんにすることにしたのだが…
「うそでしょ、あんた達…。今まで何を食べてきのよ」
愕然と見つめる先は、米を生のまま、肉と野菜を少し火であぶって味付けをしないままバリバリと食べる子供たちの食事風景。
「料理って、知ってる?」
恐る恐る聞けば、ライドと同い年くらいのそばかすの赤毛の男の子がへへ、と苦笑する。
「火をおこすことはできるんだけどなぁ。料理って言われても何をしたらいいのか全然わっかんねえ!」
だよね。そらそうだわ。親いないんだもんね!
なかばやけくそにそんなことを心の中で呟いて、しばらくは食事の面倒を見ることになる子供たちの食欲を呆然と眺めたのだった。
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