8日目
多分、長いことうなされていたと思う。
熱に浮かされて何回か意識は浮上したものの、はっきりと目を覚ますこともできずに呻いていた。
そんなとき、誰かが私の横で汗を拭ってくれたり、水を飲ませてくれていたような気がするんだけどそれもはっきりとは覚えていない。
しかし、その誰かさんの看病のおかげか、次に目が覚めたときはだいぶ頭がすっきりしていた。
突然浮上した意識にあらがうことなくぱちりと目を開けて私は天井を見つめる。
…天井。というより岩?
岩肌から水が染み出してぽたりと私の鼻の上に落ちた。
「つめた!」
久しぶりに出したような枯れた声で思わず叫ぶと、脇腹に鋭い痛みが走った。
「いってて…。まぁ、夢、じゃないみたいだなあ」
脇腹をさすって、私は体を起こす。
痛みはするが、我慢すれば歩けることに自分でも驚いた。
意外と人間って強いね。
さて。ここはどこだろうか。
どうやら洞窟の中に敷き詰めた藁の上に寝かされてたみたいだけど。
毛布や服や鍋などが散乱した生活感あふれる洞窟から出て、外に出ると、眩しい太陽の光が目を突き刺した。
そして、潮の匂いと海の音。
どうやら、この洞窟は浜辺にあったらしい。
どうしようかと、数歩外に出たところで止まっていると、上から声が降ってきた。
「お?目ェ覚めたか?」
手をかざして上を見上げれば、崖の上に見覚えのある少年が私を見下ろしていた。
「今行くから、ちょっと待ってろよ」
そういうと、そのまま少年が地面を蹴りあげて落下してくる。
まじか、こいつ。
結構高いところから飛び降りたはずの少年はぴんぴんとしていて、何事もないように私の方へ歩いてくる。
もう一度言うが、まじかこいつ。
呆れたように少年を見ると、彼は何を勘違いしたのかにっと笑って見せた。
「体は大丈夫そうだな!」
「大丈夫なわけあるか。私はお前のせいで撃たれたんだぞ」
さわやかに言う少年にねっとりと嫌味で返すが、少年は首を傾げてなんてことないように言う。
「そうか?撃たれたのは脇腹だったし唾つけときゃ治るぜ」
「死ね」
嫌味が全く通じない。
言いたいことはそこじゃないし、撃たれたら唾じゃ治んねえよ。
思わず暴言を吐いた私に少年は面白そうに笑う。
「はは、あんた面白いな!俺はライドってんだ。これからよろしくな、船長!」
握手を求められて私も渋々手を差し出して名乗る。
「私はユウナ。まあ、よろし…ん?船長?」
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