はち


アリアはそう言うと自嘲気味に笑った。


「でも、キラーには虹の尾びれってこと、もう今朝話しちゃったんだけどね。」

言われてキラーはああ、と頷く。

「…虹の尾びれの人魚には怪我や病気を治す力があるって言ったけど、それは私の場合。
純粋な一族の血にはもっと強い力が宿るの。ある説では不老不死を手に入れられるとも。

それを信じて争いを起こす人間が後を絶たないから、一族は自分達の強すぎる血をこの世から消すことにしたの。ある時代から子供を作ることをしなくなって自然と数を減らしていって…
でも、それを知った世界政府が突然虹の尾びれの人魚を保護するって言い始めた。

もちろん、一族は全員その申し出を断った。自分達の血が権力者に悪用される恐れがあったから。

だけど、世界政府はそれを認めなかった。最終的に両者の間で争いになった。

力の差は圧倒的で、結局生き残ったのは一族最後の子供だった私の母だけ。
抵抗する術がなかった幼い母はそのまま海軍に保護という名目の貴重な実験体として扱われた。

そんな母を海軍からさらって逃げたのが、当時海軍の将校だった私の父だったの。
そのまま二人はサウスブルーまで逃げて、ある小さな島で私を産んでひっそりとだけど幸せに暮らしたわ。
でも、まだ海軍の捜索は続いてる。だから、私に虹の尾びれの血が流れてるって知られちゃいけないの」


アリアはふぅ、と息をつく。アリアの話を聞いたキラーは首を傾げる。

「だが、ならどうしてアリアはこんなところにいる?サウスブルーに居たほうが安全だろう」

キラーが尋ねると、アリアは少し寂しそうに膝を引き寄せた。

「数年前、母が病で死んだの。そしてついこの間父も同じ病で…。父がね、死ぬ前にこれを私に渡したの」

アリアは足に付けているホルダーから一丁の拳銃を抜いてキラーに見せた。
キラーはアリアから拳銃を受け取ってじっくり見てみたが、飾り気のない普通の銃にしか見えなかった。

「これが…?」

この拳銃とアリアが偉大なる航路にいる関連性が分からず首をひねると、アリアが説明する。

「これを持っていてほしいって。それで、いつかもしある人に会えたら渡してほしいって。この拳銃は父が海軍から逃げるときに世話になった人の物だから。
…父の最後の願いどうしても叶えたくて私は旅に出たの」


「その人物が偉大なる航路にいるのか?」

キラーが静かに尋ねると、アリアはしっかり頷いた。


「そう。その人の名前はクザン。海軍大将青雉よ」



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