じゅうろく
「おい」
かけられた声にビクッとアリアは肩を揺らす。
「は、はい…」
恐る恐るキッドの顔を見るアリアにキッドは思わず舌打ちをした。
それにまたビクッと肩を揺らすアリアにキッドは呆れたようにため息をついたのだった。
これまでも散々暴れてきたお蔭で、名も広く知られるようになったキッドにとって人に怯えられるのは慣れたことだったが、仮にも自分の船に乗せることになったアリアにここまでビビられると、正直良い気持はしない。
まぁ、しかし、他の船員にも声をかけられるごとに怯えていたところを見ると、ただ単に人見知りなのだと言えるのかもしれないが。
それにしたってなんだってこいつはよりによってキラーにだけあんなに懐いたんだかな…
全くわからねェ。
キッドは再びため息をついたのだが、それにまたアリアは怯えたように肩を揺らしたのだった。
今、キッドとアリアは二人で街へ買い物に来ていた。
本来ならそれはキラーの役目だったが、今朝突然キラーが、用事があるからアリアを頼む。と言って押しつけていってしまったのだった。
なんだって俺がこいつの面倒を見なくちゃいけないんだ、と文句を言う暇もなくあっという間にキラーは居なくなってしまったので、仕方なくアリアに付き合って街に出てきたのだった。
「何がまだ足んねェんだ」
少し後ろをついてくるアリアに問うと、アリアはだいぶためらった後で口を開いた。
「…武器屋に行って弾を補充したいです…」
遠慮がちに答えられた言葉にキッドは少し拍子抜けしたようにアリアを見た。
「それだけか?…金はあんだ。他に買いてェモンはねェのか」
キッドの言葉にアリアはこくりと頷くことで答えたのだった。
てっきり女は服やアクセサリーを無駄に欲しがるもんだと思ってたし、今まで見てきた女達はどいつもそういったもんをねだってきた。
それなのに、銃弾が欲しいといったアリアの色気も何もない言葉に思わずキッドは口の端をにやりと上げた。
やっぱ面白ェな。
少し満足げにキッドは鼻を鳴らすと、武器屋に足を向けたのだった。
「…なんでだ…」
おかしい。武器屋まではさっきの道をまっすぐに進んだだけのはずだ。
それなのに、武器屋について後ろを振り返ると、アリアの姿が見えなかった。
あれか。
きちんと確認しなかった俺が悪ィのか?
これでもしアリアが危ない目にでもあったらキラーに散々説教されるのは嫌でもわかる。
キラーの説教は何気に長いし、しつこい。
それも、アリアのこととなればいつもより説教が長くなるのは目に見えている。
「くそ、面倒くせェ…」
キッドは髪をぼりぼりと掻きながら、アリアを探すために来た道を戻っていったのだった。
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