きゅう


キラーは驚いてアリアの顔を見る。


「海軍……大将?」


アリアは頷いて肯定する。

「だから、私は今海軍本部をめざしているの。
でも、マリンフォードへのログポースを手に入れることが出来なかったから、本部へ行く海軍船を見つけて、ついていこうと思ってたのだけど…」


上手く見つけられない、と呟くアリアにキラーは少し声を大きくして問い掛ける。

「お前にとって海軍は危険なんだろう?」

「そう。…でもばれなければ大丈夫」


言い切るアリアにキラーは額の辺りに手をついてため息をついた。




「アリアは海軍を…この偉大なる航路を少しなめてるんじゃないか?」


突然キラーから言われた否定的な言葉にアリアはきょとんと首を傾げた。


「この海は何が起こるか分からない。多分今までもいろんな経験をしてきたはずだ。…だが、それでもここはまだ序盤にすぎない。サウスブルーの穏やかな海で生きてきたお前が1人で簡単に半周できるような甘いところじゃない」


キラーの厳しい言葉に、アリアは目を見開く。反論したかったが、キラーの言うことはあまりに正論で、実際今までもアリアは海の中を進んできたというのに何度も死にかけていた。開きかけた唇をぎゅっと噛んでアリアは俯く。


「もし運良く海軍本部に行けても、大将に会いたい等と言ったらそれなりに身元を調べられるだろう。そうなればすぐに素性がばれることになるのは目に見えている」


更に絶望的な言葉を続けられ、確かに自分が少し短絡的に考えていたことを思い知らされた。


…でも。

「…それでも、私はクザンに会わなきゃいけないの」

目に涙をため、口を震わせて絞りだされた声にキラーははっとする。


「…すまない。少し言葉がきつかったな」

キラーは気まずそうに顔をそらせて謝ったが、アリアはふるふると首を振った。

「キラーが言ってることは正しい。悪いのはよく考えてなかった私。…でも行かなくちゃいけないんだから、今度はどうしたらいいか考えなきゃ」


気丈に、溜まった涙を拭いさって前を見据えるアリアにキラーは微笑む。

良い目をしている。


キラーはその強い目を見て、心に思っていた言葉を口に出した。



「キッド海賊団の船に乗らないか?」


え?とアリアがキラーを凝視する。

「キッドはこの海を制覇して海賊王になる男だ。ここらで沈むような柔な船じゃない。それに船には船医やコックがいる。船に乗ったほうが確実に偉大なる航路を越えていける」

キラーはそう言ってアリアの様子を見てみると、アリアは呆けたようにキラーを見て呟いた。

「海賊王…」

「そうだ。…笑うか?」

キラーが静かに問うと、アリアは首を横に振った。


「ううん。…すごい」

呟かれたその言葉に、そうか、と言ってキラーはアリアの頭を撫でた。




「…乗っても良いの?」

アリアは頭に置かれた手の下からキラーを見上げる。
キラーは柔らかく頷いた。

「アリアをマリンフォードの近くまで乗せるようにキッドに言ってみる。多分大丈夫だろう」


と言うキラーに、アリアはありがとうと小さく笑った。




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