いつつ



「さぁ!高校生という頼もしい仲間も加わったことだし!頼りないメガネくん、頑張ろーーね!」

ばしばし!と背中を叩く清継にリクオがはは、と笑った。
その後ろで獏が呟く。


「邪魅…。日本では鳥山石燕の今昔画図続百鬼にもある比較的有名な妖怪。“魑魅”の類で、妖邪の悪鬼であるが、あいまいな憑きもののようなもの…か。…蹴っ飛ばしちまったけど」

最後にぼそりと呟かれた言葉を聞き取れずに、清継が目を輝かせる。

「その通ーーーりだ!獏くん!詳しいね、君!いっそこのまま清十字団に入ろう!そうしよう!」

テンションの高い清継に獏が身を引いたとき


リクオが清継の後ろに“なにか”を見つけて叫ぶ。

「いたっ…!清継くん後ろーーー!?」

「え…、えーー!?」

混乱する清継を置いて、ばっとリクオは“なにか”に向かって走り出す。

しかし

(ん?待てよ―…さっき見た奴と違ってたかも…。なんだ……、この屋敷―…)

(他にも―…いる?)


リクオが考えながら“なにか”を追いかけ、廊下の角に入ったとき

―ガブッ


「あっ……!!」

リクオが実体の掴めない黒いもやに飲み込まれる。

「どーした奴良くん!?」

清継が走って来る音にリクオが叫ぶ。

「だめだ…清継くん、近づいちゃ…!今すぐ皆のところへ帰るんだ!!」

え?と止まった清継を獏がぐいっと襟首を掴んで部屋の方へ放り投げる。

「こいつら…違う!!これ…妖怪じゃあない!?」

もがきながら叫ぶリクオ。

しかし次の瞬間



―ザンッ



「え?」

リクオが刀を取り出す前に、黒いもやは何かに裂かれるように散った。


「獏、くん…?」

見上げたリクオが見たのは、黒いもやをまるで紙を破るかのように素手で祓った獏の姿。

驚いたように目を見開くリクオに獏は何もなかったようにくるりと背を向ける。

「ま、待って!」

慌てて獏を引きとめたリクオは、一瞬迷ってから言葉を発する。

「今、のは、どうやって…?獏くんは、もしかして…人間じゃ、ない…?」

それに面倒くさそうに眉をひそめる獏。

「人間じゃなけりゃ一体何なんだよ。あんな薄っぺらいもん誰でも祓える」

その言葉に、詰まるリクオに獏はふうっとため息をつく。

「あーぁ。っくそ。これ、ばれたら水姫に怒られるか…?」

「?水姫さんに?」

リクオは迷う様に、獏に問う。

「え、と…、獏くんは、本当に水姫さんの…彼氏…?」

恐る恐る言われた言葉に、獏が薄く笑う。

「そうだと言ったら?」

「…っ!」

目を見開いたリクオに獏は軽く笑って背を向ける。

「誰があんな小娘に発情するかっての」

「!!?」

背中を向けたまま言われた言葉に、リクオはかぁっと顔を赤くさせる。

「ば、獏くん…!」

咎めるように言われた名前に獏はリクオを少し振り返ってせせら笑う。

「全く。初心だな。そんなんじゃ手に入るもんも入らないな。本当にお前が夢の持ち主か?」

「な…!」

絶句するリクオに獏は今度こそ背を向けてゆったりと歩きだしたのだった。






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