ななつ


「…春奈…何してんの?」

私は、客間の襖を開けてため息をついた。

そこでは、春奈が黒馬と仲良くお茶を飲んでいる光景が広がっていた。

「あっ!水姫!お邪魔してるね」

入口でうなだれている私に、春奈はひらひらと手を振る。

「ああ。うん…。いらっしゃい…」

なんか春奈には何を言っても無駄なような気がして再びため息をつく。

「水姫様。かようにため息ばかりつかれては幸が逃げます」

「あー…。うん。黒馬。もういいから春奈と二人にしてくれる?」

的外れなことを淡々と諭してくる黒馬にもう出て行くように、と手を振ると大人しく従う黒馬。

「あれ?黒馬さん行かれちゃうんですか?またお話しましょうね」

去る黒馬に笑顔で言う春奈。

何?いつのまに春奈はこんなに黒馬に懐いちゃったわけ?






とりあえず、二人っきりになった客間で春奈と向かい合わせになるように座敷に座る。

「えーっと…春奈。どうして今日うちに?」

恐る恐る尋ねると、春奈は怒ったように私を見る。

「だって、水姫ったら今日無断欠席だったじゃない!私、すっごく心配したんだから!」

ぷぅっと頬を膨らませて怒る春奈には悪いけど、それ可愛すぎて全然怒られてる感じがしません。

っていうか、川熊様と話してただけなのにもう学校が終わる時間になってたことに驚きだ。

そんなことをぼんやり考えてると、春奈に頭をぱしんと叩かれた。

「もう!聞いてるの?水姫」

叩かれた頭に手をやって私は苦笑する。

「ごめんごめん。そんなに怒らないでよ春奈。可愛い顔が台無しだよ?」

「そんなこと言ってはぐらかそうったってそうはいかないんだから!」

うーん。
今日の春奈は随分ご立腹のようだ。

どうにか機嫌治せないかなぁ、と思ってとりあえず素直に頭を下げてみる。

「心配かけて本当にごめん。お詫びに春奈のお願いなんでも一つきくからさ」

そう言った瞬間

ガシッ

「水姫。今の言葉に二言はないわね?」

いきなり春奈が私の両手を握ってそう言ってくるから、思わず顔をあげると


(うわぁ。なんだろ。なんかとんでもないことを言っちゃった気がする)

春奈が目をキラキラさせながら私を見据えていたのだった。







「…はぁ?」

春奈の言った話を信じたくなくて思わず聞き返すと、春奈が、もう、と言いながらご丁寧にもう一度話してくれた。

「だから、一緒に捩眼山に来てくれないかなって聞いたの!」

いや、きちんと聞こえてたけどね。

「なんで…よりによってあの清継くん達と一緒にそんなところ行く約束なんかしちゃったわけ…?」

明らかにこの話はあれじゃない。
牛鬼編の突入ですよね?

呆れて春奈に聞くと、春奈は照れたように顔を赤くしてもじもじと話し出す。

「あのね…今日、日直でたまたま遅くまで学校に残ってたんだけど…そしたら…清継くん達がまだ残っててね…」

なにこれ。
春奈明らかに恋する乙女モードなんですけど!

え?考えたくない…けど春奈ってもしかして…清継くんのこと…

え?

いや。ダメだよ。春奈は渡さないよ?

私がそんなことを悶々と考えながら聞いてると、ついに春奈が爆弾発言を投下した。

「奴良くんのお見舞いに一緒に行くことになって…!水姫…!どうしよう!」

キャーっと手で顔を覆う春奈を私は呆然と見つめる。

なに!?
どういうこと!?
むしろ私がどうしようだよ!

気付いて春奈!!





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