とお



「…職員室どこやろ」

「…ね」


ただいま迷子中。
今度は二人で。


「どうしよっか。この棟であってるはずなんだけどなぁ」

ゆらちゃんと二人うろうろと歩き回っていたが、このままではらちがあかない。

「誰かに聞こっか」

「そやね」


とはいったもののもともと遅刻ギリギリだったから廊下にはあまり人がいない。

そんな中、少し先で騒がしい集団を見つけて、ゆらちゃんと顔を見合わす。

「あの子に聞いてくるわ」

ゆらちゃんがその集団の方を指さしたので、私は頷く。

「私、ここで待ってるね」

あれは恐らくカナちゃんだろう。

そしてそこには他の面々もいるはず。

傍観者でいるには、なるべく関わりは持たない方がいいのだから、ここはゆらちゃんに任せてしまおう。

ゆらちゃんに手を振った私を特に不審がる事もなくゆらちゃんはカナちゃんに職員室の場所を聞きに行ったのだった。





それにしてもカナちゃんも可愛いなぁ。
まだ見てないけど、雪女も相当可愛いだろうな…

いいな、可愛い子!
ほんと目の保養になるよね!

そんな可愛い子をいじめる輩はこの水姫が絶対許さないんだから!

はっきり言ってマンガの詳しい内容なんてもうすっかり忘れるほどの年月が経っているのだから、正直あの可愛い子達にどんな災難が降りかかるのかは覚えてないが、だからこそ陰でしっかり見守っておこう。

よし!頑張れ自分!



「水姫さん、職員室はこの棟の2階やて」

壁に寄り掛かって悶々とそんなことを考えていた私にゆらちゃんが戻ってきて教えてくれる。

「そっか。じゃ早く行こうか。転校初日に遅刻はやだもんね」

ゆらちゃんににこっと笑い返して私は歩き出したのだった。





「花開院さんは前から転入決まってたんだけど、高尾さんは急だったからね。本当は転校生は教室をばらけさせるんだけど今回は二人一緒のクラスに入ってもらうことになったんだ」

職員室で担任の先生だという男の人に説明される。

「正直、転校生ってめんどくさいから一緒のクラスにまとめて放り込んじゃえってことなんだけどね」

そう言ってはっはっは、と笑うこの先生はおおらかなんだか大雑把なんだか。

っていうか、私は2年も前から母様に入学の件を頼んどいたのに急ってどういうことだ…!
忘れてたのか、入学手続きを…!

あぁ、うん。母様なら忘れてそうだなぁ。

私はぼんやりと遠い母のことを思ってため息をついたのだった。






「京都から来ました、花開院といいます。フルネームは花開院ゆらです。どうぞよしなに…」

「同じく京都から来た高尾水姫です。よろしくお願いします」


二人で自己紹介を終えて席に座ると、まだHRの時間にも関わらずクラスの子たちが話しかけてくる。

おいおい、いいのかよ先生、と先生を見るが、既に先生は自分の机で新聞紙を広げてHRをする気なんて全くないようだった。


「ねぇねぇ、高尾さんって花開院さんと同じとこから来たんでしょ?」

「すごいね、時期もぴったりだし。前の学校も同じだったりしたの?」

あぁ、若い女の子に囲まれるって幸せ…。
しかも人間の女の子…!
いつも精霊とかしか相手にしてなかったから嬉しすぎる…!

若干おじさんくさいことを思いながらも私は質問に答える。

「ゆらちゃんとは偶然一緒だっただけだよ。私、京都では学校通ってなかったからさ」

答えると、女の子達はびっくりしたように声をあげる。

「え、じゃあ今までどうしてたの?」

「私は体弱かったから学校行けなくて家庭教師に勉強教えてもらってたんだ」

私はあらかじめ用意しておいた嘘を言ってごまかす。

しかし

そうなんだ…、と驚くほど悲しそうに俯いてしまった一人の女の子にびっくりする。

「え、なんでそんなに悲しそうにするの…!?」

慌ててその子の肩に手をやってさすってやると、その子はぽつりと呟く。

「ごめんね…。そんな事情があったなんて知らないでそんなこと聞いちゃって…。学校に行けなかったなんてすごく辛いことだと思うのに」

そう言ってしゅんっとしてしまったその子の言葉に一瞬呆ける。

な、なんて優しい子なんだ…!

「気にしないで大丈夫だよ!学校行けなくても構ってくれる人とかいっぱいいたしさ。…まぁ、確かに同年代の友達はいなかったけど」

そう言って笑いかけると、その子はぎゅっと私の両手を握って私を見つめてきた。

「じゃ、じゃあ私が高尾さんの初めての友達になる!」

「…!」

う、嬉しすぎる…!
何この可愛い子…!


「高尾さん…?ごめんね、馴れ馴れしすぎて嫌だったかな?」

感動して思わず固まってしまった私に、心配そうに聞いてくるこの子の言葉に私ははっと我を取り戻す。

「ご、ごめん。そんなんじゃなくて…ちょっと嬉しすぎて。ありがとう!私のことは水姫でいいから」

笑ってそう言うとその子も安心したように笑い返してくれた。

「良かった。私は加賀春奈。春奈でいいよ。よろしくね」

「春奈ね。よろしく」


この世界で初めてゲットした友達はふんわりとした栗色のショートカットの笑顔が可愛い女の子でした。




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