海賊船×敵襲

「十字の方角、敵襲!海軍だー!!」

そんな声を聞いたのは、昼下がりの穏やかな午後。

船のデッキで紅茶をすすっていサイカは、身を乗り出して海軍船を探した。

船の前方に見えるのは確かに海軍船。…だが。

「おかしいですねぇ」

「ん?何がだ?サイカ」

サイカの横を慌ただしく通り過ぎようとしたシャチが反応する。

「いえ、ね。ここの海域は普段海軍支部が巡航するはずです。…が、あの海軍船、おそらく本部のものですよ」

「は?なんで分かんだ、そんなこと」

「船の配置ですよ。支部ならせいぜい2〜3隻での巡航のはず。ですが、向こうは5隻の軍艦で、かつ特徴的な並び方をしている。あれは本部中将以上が乗っているのではないでしょうか。それも臨戦態勢でね」

サイカの話に呆気にとられているシャチに私は笑って言う。

「もしも中将だったら面倒ですよ。船長さんに教えなくてもいいんですか?」

それに、はっとしたシャチは一瞬ためらった後、踵を返した。

「一応、船長に知らせてくるが、お前動くなよ」

と走り出そうとした直前

「その必要はない」

「船長…」

シャチが入ろうとしたドアから出てきたローは眩しそうに手で日差しを遮りながらサイカを見る。

「なぜお前がそんなに海軍のことに詳しいかを聞きてェとこだが、確かにあれが中将なら厄介だ。恐らく向こうにはもう気付かれているだろうが、潜水を…」

言いかけたところだった。

「それは困るねぇ〜」

「「!!」」


突然頭上から聞こえてきた声に、その場の全員が瞬時に臨戦態勢をとる。

「あれは、まさか…大将黄猿!?」

長剣を抜き放ったローが、帆の上にいる人物の姿に驚きを隠せず目を大きく見開いて呟く。

「馬鹿な!大将がなんでこんなとこに…!」

「うそだろ!船長…!」

クルーたちからも驚きの声が漏れる。

その様子をボルサリーノは見下ろしながら、首を傾げる。

「ん〜?報告では確かにこの船のはずなんだがね〜」

「…なんのことだ」

ローの問いかけには答えずに、ボルサリーノは懐から黒電電虫を取り出して、話しかける。

「もしも〜し。こちらボルサリーノ〜。確認を取りたいんだけど〜」

しかし、当然ながら黒電電虫は盗聴用。
返答が返ってくるはずもなかったのだが、ボルサリーノはしきりに首を傾げてからめんどくさそうに黒電電虫をしまって、下を見下ろす。

「仕方がないね〜。隅々まで調べさせてもらうよぉ〜。海賊の皆さん」

そう言いながら、指先を下に向ける。

「もちろん、君達を捕まえて、だけどね〜」

きゅいぃん、と指先を光らせながら言われた言葉にローがハッと剣を構えたときだった。



―ザッパァアアン!!



まだ離れたところにある海軍船のもとで大きな水飛沫が立ち昇り、ハートの海賊団のもとまで届いて天気外れの雨を降らせた。

「ん〜?」

ボルサリーノもハートの海賊団も注視する中、現れたのは…

「あれは…海王類!?それも超大型の!」

誰かが言った言葉通り、それは遥か深海にしか現れぬと思われていた超大型の海王類だった。

顔だけで海軍船の5倍くらいはありそうなほどの圧倒的な大きさ。
その海王類が軍艦を呑みこもうとしているみたいだった。

「あちゃ〜。まずいねぇ。船が全部沈んだらあっしは帰れなくなるよ」

そう言って、ボルサリーノはもう一度海賊船を見下ろしてから光になって消えてしまった。


「…助かった、のか…?」

シャチの言葉に、成り行きを見守ることしか出来なかったクルーたちが、力が抜けたように座り込む。

「なにがなんだかわかんねェけど、良かったあ〜…」


「海王類様様だな」

ほっとして息をつきクルーの間で、ローだけが険しい顔つきで海王類を迎撃し始めた海軍を見つめていたが、ひとつ首を振って踵を返した。

「油断すんじゃねぇ。今のうちに潜るぞ。急いで用意しろ」

「アイアイ、キャプテン!」

指示を出してから船の中に戻ったローは、冷や汗をぬぐってから考える。

どう考えてもおかしい。

なぜ、こんなところに大将が。

前の島でも大将が現れたと聞いたから、その道中だろうか。

いや、この海路では本部まで遠回りのはずだ。

なにより、黄猿がこの船を目的としていたように思える発言が気になる。


ぐんぐんと潜水していく船の中で、ローの思考も奥深くへめぐらせていったのだった。


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