twenty step!




―コンコン

恐る恐るノックをすると、中から入れ、と声が聞こえた。
人間の手で初めて開けるローさんの部屋の扉。
少し軋みながら扉が開いて、ソファに腰掛けるローさんの姿が見えた。

珍しく、寝るとき以外滅多に外さない帽子を机に置いている。

「…早く入れ」

言われて、慌てて私はドアを閉めて、ローさんの前で正座する。と、呆れたようにローさんが私を見降ろす。

「なんで床で正座なんだ」

「えーっと…」

ついつい今までの癖で床に座ってしまったみたいだ。

でも、こうやってローさんを見上げる位置が一番落ち着くからわざと動かないでいると、諦めたようにため息をついた。

「全く。人間になっても雪豹んときと変わらねぇじゃねェか」

反論できずに苦笑すると、ひょいっとローさんに抱え上げられる。

その感覚も慣れたもので、そのままローさんの膝の上に乗せられても居心地がいいとしか思えなかった。

「お前、そういえば一応野生動物だったはずなんだがな」

またもやローさんを呆れさせてしまったみたいでうなだれると、ローさんはくつくつと喉を鳴らす。
いつもの毛並を撫でるように、さらりと髪を梳かれて私は目を細めた。


「もう、離さねェぞ。…オレはトラファルガー・ロー。海賊だ。オレと一緒に来い、テトラ」

初めて会ったときに言われたのと同じその言葉に、私は小さく頷いた。

ここから、私達の旅は再び始まるのだ。

この大海原を巡る旅を、この最愛の人と共に。



end.


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