twelve step!



「は?テトラ?」

ローの言葉にシャチはぽかんと口をあける。

「ああ。その日記の記録者はあいつの父親だ」

「船長、待ってくださいよ!だって、あいつは…!」

そうシャチが反論しようとしたとき、ペンギンがそうか、と呟いた。

「実験体にされたこの子供がテトラなら、確かに辻褄があう」

「どういうことだ?」

「テトラは二つの悪魔の実の能力を持っている。つまり、あいつの雪豹の姿は悪魔の実の能力だとすると…。そういうことですよね」

ペンギンがローに向かってそう聞けば、ローは頷く。

「じゃ、じゃあ、あいつは本当は人間で…、俺らをずっと騙してたってことか!?」

「落ち着いてよ、シャチ」

二人のやりとりを聞いたシャチが声を荒げるが、それをベポが宥める。

「きっと何か理由があったんだよ!」

「理由…?この船の仲間すらも騙さなきゃいけない理由がか!?そんなものあっていいわけないだろ!」

「シャチ…」

憤るシャチにペンギンも声をかけるが、シャチは吐き出すように言葉を続ける。

「俺はあいつを仲間だと信じた!信じたんだ!なのに、向こうは俺らを信じていなかったんだぞ!?裏切られたんだ…!」

そう怒鳴るシャチの頬には涙が伝っていた。

「…シャチは、テトラが自分を信じてくれなかったことが悔しいんだね…」

ベポが俯いて呟く。

その様子を見ながらローが口を開く。

「…もし、仮にあいつ自身がこのことを知らなかったとしたら?」


「「え?」」


ベポとシャチが同時に顔を上げる。

「写真の挟まってたページからまた日記が続いている。読んでみろ」

言われて、三人は日記をめくる。

「本当だ。…『私は間違っていた。私はこの子から全てを奪った。母親も兄弟も、人生も。日に日に衰弱していくこの子に私は何ができるのか』」

「まるで、懺悔の文だな」

「次のページにも続いている。―『私は、今日マリージョアに向かい、実験の中止を提言した。しかし提言は受け入れられず。更に、あの子を基盤とした人間兵器の開発計画が進んでいることを知った。もう私では止めることが出来ない。』」

「人間兵器…。悪魔の実を二つ扱えるようになったら確かに物凄い戦力になるね」

「…『数日間、抗議したが成果はなく帰国。しかし、帰ったとき、研究所のある私の国はなくなっていた』…え?」

三人は突然の文の意味が分からず首を傾げるが、ローがおもむろに言葉を発する。

「十年前、科学の発展したある国が一夜で滅亡した。聞いたことねェか?」

ローの問いにペンギンが呟く。

「“悲劇の国”のことですか」

「ああ。その犯人として出回った手配書がそれだ」

さっきの手配書を顎で指し示してローは言う。

「『何が起こったのかは分からない。だが、唯一の生き残りは私の娘だけだった。ここにもう研究の資料はない。今この子を逃がせばこの子は海軍に利用されることなく生きることが出来るだろう。私はこの子に記憶を消す薬を飲まして海へ逃がした。人間としてでなくてもいい。せめて何にも縛られることなく生きてくれるように』…なるほどな。それで過去のことは忘れて自分のことを雪豹だと思い込んでいたってことか」

ペンギンが納得したように頷くが、シャチは俯いたまま動かなかった。

「まぁ、そういうことだ。その後で海軍が気づいて手配書を出したんだろう。貴重な実験体を取り戻すためにな」

ローの言葉にペンギンは同意する。

「でしょうね。…だとしたら、この先にいるのは海軍。それも恐らくかなりの戦力かと」

「久しぶりに腕が鳴るな。…なァ、シャチ」

ローの言葉にシャチはゆるりと顔をあげる。

そして

―パンッ

勢いよく自分の両頬を叩いてニカッと笑った。

「やってやろうじゃないスか!あいつに言いたい事はあいつに会ってから思いっきり言ってやる!暴れていいんスよね、船長」

その言葉にローはにやりと口端をゆがませる。

「存分にな」



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