ten step!


「船長!」

珍しく慌てたように部屋に入ってきたペンギンをローが睨みつける。

「うるせェぞ」

低く唸るように言えば、ペンギンはすぐに謝るが困惑した雰囲気は隠すことができなかったようだ。

「…何があった」

その様子に眉をひそめながら尋ねると、ペンギンは待っていたようにすかさず答える。

「テトラのことを知っているらしき男が瀕死の重体で船にやってきました」

「何?」

ローはさらに眉間の皺を深くする。

「何を聞いても船長を呼べ、の一点張りでして…。このまま放っといたら恐らく…」

言葉を濁したペンギンに、ちっと舌打ちしてからローは刀を手に取り腰をあげる。

「行ってやる。案内しろ」

ローはいつにない緊迫感に胸が切迫するのを感じていたのだった。



「やっぱりてめえか」

甲板でうずくまる男を見下ろしながらローは忌々しげに言う。

「えっ!船長、この男知ってるんスか?」

驚くシャチを無視してローはしゃがんで男の様子を見る。

「頼…む。話を…ッ…てくれ」

ひゅう、と息の漏れる音で上手く言葉が聞き取れない。
ハルトの傷を確かめながらローは言葉を返す。

「それはあいつのことか」

聞くと、掠れた声で肯定する。

「あぁ。情け…いが…僕ではどうしようも…ない…」

「まずは手当しねぇと話も聞けそうにないな。…おい。こいつを医務室へ連れて行け」

ハルトの傷を確認したローがクルーに指示を出すが、それをハルトがローの服を掴むことで止める。

「これ…ッ…を…。今すぐ…ここへ…」

ハルトが懐から震える手で出したのはエターナルポースだった。

「あの子が、政府に連れて…いかれたっ…。今なら途中で追いつける…」

ローは頷くと、ベポとペンギンを呼ぶ。

「今すぐ出航だ。針路はこのエターナルポースだ」

ローの言葉に珍しくペンギンは躊躇を見せる。

「しかし…船長、罠かも…」

「この先にテトラがいる。罠だろうと俺は自分のクルーを取り戻すためなら飛び込んでやる。お前らは違うのか?」

ローの言葉に一瞬沈黙が降りた後、船員達が一斉に声をあげる。

「そうだ!」

「あいつを助けられるんだったら俺は行くぞ!」

「俺もだ!」



「…だそうだ」

クルー達の声に、にやりと不敵な笑みを浮かべてローはペンギンを見る。

その顔にペンギンはため息を落として肩をすくめる。

「俺だってそうですよ。…ベポ、行くぞ」

背を向けて歩き出したペンギンの後を数名のクルーが追いかける。

「シャチ。お前はこいつを医務室へ。すぐに手術をする」

「アイアイ!」

「後の奴はすぐに出航準備だ。全速力で追いかけるぞ」

ローの言葉で一気に船上は慌ただしくなったのだった。



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