eight step!


グッと足に力を込めてほぼ垂直に飛びあがって、私は2階の自分の部屋の窓に飛び乗る。
サンダルを脱いで、私は部屋に入って家の物音を聞きとる。

(よかった…はると、まだ帰ってない)

でも、そろそろ帰ってきてもおかしくない時間だ。
私は、さっさとサンダルを玄関に戻して再び部屋に戻る。

その数分後、ドアが開く音がしてハルトの声が聞こえた。

「ただいまー」

疲れたような声に、おかえりなさい、と返しながら私は足の包帯をくるくると巻いてはずす。
さすがに今日もベッドの中で食事ってわけにもいかないから、ハルトに見つからないように丁寧に巻いた包帯をポケットにしまった。

タタタッと階段を降りると、ハルトはもう夕ご飯の準備をしていた。

「なにか、てつだうことある?」

きれいに魚をさばいていくハルトの横にヒョコッと顔を出して尋ねると、ハルトは少し考えてから、袋を指さす。

「あの中に入ってる玉ねぎの皮、剥いてくれるかい?」

「うんっ!」

私は、袋から玉ねぎを3個取り出して、ハルトの横で皮むきを始めた。


出来上がった料理をテーブルに並べてハルトが笑う。

「さて。フィリアが手伝ってくれたおかげで夕ご飯が早くできたね」

「わたし、やくにたてた?」

そう聞くと、ハルトはもちろん、と笑いながら頭を撫でてくれた。

「さ、あとは食器の準備だね」

そう言ってハルトがお皿を出そうとした時

―ピンポン

ぴたっとハルトの動きが固まった。


私は首を傾げる。
こんな時間にお客さんってことは急患かな?

そう思っている間にも何度もチャイムが鳴る。

「はると…?」

急患だったら急がないと…、とハルトを見るが、ハルトの顔がとても険しくって私は思わず息をのんだ。

そのうち、チャイムだけではなくドンドンっとドアを強く叩く音が聞こえた。

「…フィリア。2階に行っていなさい」

険しい顔のまま、ハルトは言う。
重いその言葉に逆らえず、私は頷いたのだった。




(…この気配。まさか…はや過ぎる)

数年前までしつこいほど感じていた気配。

しかし、最近滅多に感じなかったのだ。
もう諦めたのかと。

油断…していた。

ドアを静かに開ける。
その目の前に立つ複数の人影。

「何の用でしょうか。…世界政府の諜報部ともあろう方々が」



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