six step!




「船長…」

船へ戻ると、シャチが俺に沈んだ声をかけてきた。

「いくら探しても…この島には…」

俺はシャチの言葉を聞かずに自室に足を向ける。
あいつの報告なんざ聞かなくても分かる。

ドサッと、自分の部屋のソファに身を投げ出して、俺はさっきの男とのやりとりを思い出す。

男―ハルトとかいう奴が持ってたあの赤い首輪は確かに俺があいつに与えたものだった。
俺のものだという印がついていた。
赤い首輪に付けた、俺のマーク。

この海賊団のシンボルが、確信させる。

ハルトの言葉に嘘はないと。


なら、あの海岸であった女が…。


「…くそっ」

俺は小さく舌打ちしてソファの前のテーブルを蹴った。

記憶がないだと?

ふざけんじゃねぇ。

俺のことを忘れるなんて俺が許さねェ。

お前は俺のモンだ。


もう会うな?

あいつの過去に何があろうと関係ねェ。

今のあいつはこの船のクルーだ。
連れ戻すに決まってんだろ。

俺は俺のモンを簡単に手放せるほど器が大きくできてねェんだよ。



家に帰って朝と同じようにベッドに潜り込んでしばらくするとハルトも帰ってきた。

「お、かえり。はると…」

約束を破ってしまった後ろめたさで思わず言葉がどもる。

でも、ハルトは気にせずに笑ってただいま、と返してくれた。

「今日は夕ご飯こっちに持ってきてあげるからベッドで食べるといいよ。まだ安静にしといた方がいいからね」

そのハルトの言葉に私はほっと息をつく。

ベッドから出ると、足の怪我を見られてしまう。

一応、帰ってから一通りの消毒は済ませたが、何か包帯を捨てることができずにまだ巻いたままなのだ。

だから見られれば包帯のことを聞かれるに決まってるし、そうすれば上手い言い訳も思いつかないからきっと今日約束を破って外にでて人と会ったこともバレてしまうだろう。

(ごめんね、はると…)

こんなに良くしてくれるハルトに嘘をついてるという呵責はあるが、それでも今日外に出たことを後悔していない自分がいるのを何となく感じていた。

海を見れた。

海を見ている男の人に会えた。

懐かしいぬくもりに出会えた。


きっとあの人に私は会ったことがある。

だってこんなにも胸が逸るんだもの。

会えたことで、話せたことで、触られたことでこんなにも胸が躍る。

逃げちゃ、だめだ。

知らない振りして、忘れて、幸せになるよりもきっと大切なことだから。

明日も行こう。

あの人に会いに。

あの青い海へ。



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