twenty-two hop!



「せーんちょー。どうするんすか?」

シャチが両手にかけられた手錠を弄びながら、ローに尋ねる。

「シャチ。この手錠どれくらいで抜けられる?」

シャチの質問に答えることなく、ローは聞き返した。

「そうっすねー。まぁ、1分もあれば」

「そうか。この牢の鍵は?」

ロー達はあのまま最初に通された部屋ではなく、牢屋に入れられていた。

「んー。まあ、5分あれば十分すかね」

なんてことなさそうに答えるシャチにローはにやりと笑った。

「十分だ。せっかく向こうが食料も金も船に入れてくれてんだ。警戒もしないで武器もそこに置いてあるし何も問題ねェな。夜になったら行動を開始するぞ」

「アイアイ。船の方はどうしますか?」

「船にはペンギンがいるから大丈夫だろ。とりあえず、シャチはここを出たら砲台を全てぶっ壊してこい。ついでにこの城に目ぼしいもんがあったら全て奪え。べポは船に戻ってペンギンに出港の準備をするよう言っとけ」

「アイアイ。キャプテンはテトラを迎えに行くんだよね」

べポの言葉にローはふっと笑っただけで返したのだった。




テトラはロー達を見送った後、衛兵達に籠に入れられて王様の前に差し出されていた。

「おお。何とも美しい雪豹だ。これぞ我が王国にふさわしい生き物であるな」

くつくつと笑う王様の顔を見たくなくてテトラはぷいっと顔を逸らした。

「それにしても、私もやりすぎた。雪豹の毛皮はあまりに美しいからつい集めたくなってしまう。国民には海賊の仕業と言ったが、近臣以外は誰も私が雪豹を狩っていた等とは思うまいな」

今度は声をあげて笑う王様をテトラは唖然と見つめた。

(じゃあ、あの話嘘だったの…?)

ぐるる、と低く唸るテトラを見て王様は嫌な笑みを浮かべた。

「威勢の良さそうな雪豹だ。早く毛皮にして座ってみたいな」

ぞっとするような言葉を口にして王様はまた大きく笑ったのだった。

そして、王様の部屋らしきところに運ばれたテトラは思わず目を見開いた。

大小様々な雪豹の毛皮が展示物のように部屋に飾られている。

「どうだ。素晴らしいだろう。しかし、お前の毛並みはこの中でとびきり美しい。国民には野蛮なあの海賊共がお前を渡さなかったために戦闘になり、奴らにどさくさで殺されてしまったということにしよう」

窓から海を眺めながらほくそ笑む王様の言葉にテトラはピクリと反応する。

「国民は海賊なんかより私のことを信じるに決まってるからな。まぁ、念のためあの海賊船ごと奴らには海に沈んでもらうか。夜明けとともに砲撃の命令を出そう。海賊なんぞに3億ベリーなど渡してたまるか」

奴らは何が何だかわからぬうちに死んでいくのだ、と笑った王様。


(許せない…)


テトラは怒りで目の前が赤く染まっていく気がした。

「ガァルルルゥ…!」

(たとえローさんが私を手放したのだとしても、私はローさん達を守る!)

大きく唸ったテトラは入れられていた檻に何度も体当たりする。

メキメキ…と音をたててしなる木の柵にテトラは勢いよく噛みつく。

バキッと呆気なく折れた柵の間からテトラはするりと抜け出す。

まさか檻が壊されるとは思っていなかったのだろう。
王様は面白いほど焦って大きな声で衛兵を呼ぶ。

ダダダッと衛兵達が部屋になだれ込んでくるが、一瞬早くテトラは王様にのしかかり押し倒した。

「グルゥ…!」

牙を見せて唸れば、冷や汗をだらだらと流しながら情けなく命乞いをする王様。

なんて滑稽な王様。

嘘つきで強欲で情けない王様。

怒りでいっぱいだったテトラの頭がだんだんと冷めていく。

今にも噛みつきそうだった本能を理性でなんとか押しとどめる。

(こんな奴殺しても意味がないよね。それよりも早くローさん達を逃がさなきゃ)


最後にもう一度、グルゥ…!と王様の目の前で威嚇してから、高く跳躍する。

衛兵たちの上を軽々飛び越してテトラは出口に向かった。

慌てて衛兵たちが追いかけてくるが、人間の足で私に追いつけるわけがない。

(早く…早くローさんを…)

どこにローさん達がいるのか分からなかったから、テトラはただがむしゃらに走った。

それがいけなかったのかもしれない。
城の構造は複雑で、気づいた時にはもうここがどこだか全く分からなくなってしまった。

しかも、後ろから足音が近づいてくる。

とりあえず、その足音から逃げるようにテトラは反対方向に走ったが、運の悪いことにそこは行き止まりだった。

(しょうがない…!私だってやるときゃやるのよ!)

ぐっと足に力を込めて一気に後ろの人物に跳びかかる。

ガキッ…!

殺すつもりで剥いた牙が黒い棒のようなものに阻まれる。



「囚われの姫を助けに行く予定だったが…姫と言うには少しお転婆だったみたいだな」

くつくつという笑い声と共に聞こえた声は…

「ぐ、ぐぅる…!」
(ローさん!)

まだ噛んだままのそれはローさんの刀の鞘だった。

そして目の前には相変わらず不敵に笑うローさんの姿があった。



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