twenty-one hop!


「結局、どうゆうことなんスかね」

場所は変わって、ここは宮殿の中。

あれから突然態度が豹変し、ぜひ国王に会ってほしいと頼まれ、とりあえずローさんとシャチさんとべポ、そして何故か絶対に来てほしいと言われて私も宮殿に招かれたのだ。

シャチさんの言葉に答えたのはローさん。

「さぁな。どういうつもりかは分かんねェが、テトラが関係してるのは間違いねェだろ」

応接間だといって通された立派な部屋の豪華なソファにどっかりと座ってローさんはちらりと私を見た。

なんか知ってんのか?と意味を含ませた目線に私は首を傾げるしかない。



「まぁ、何はともかくお前のおかげで何とか補給は済ませられそうだな」

よしよしと頭を撫でながら言うシャチさんに私はしっぽを振ってこたえる。

どんな形であれ、皆の役に立てたのは初めてのような気がして私はシャチさんの言葉に密かに胸を躍らせたのだった。


「ここから先は王の謁見の間です。武器の類は全て預からせてもらいます」

結局、何の説明もないままここまで案内されてきてしまったけど、ローさん達が簡単に武器を預けるとは思えないなー、なんて思ってたら、なんといとも簡単にローさんは刀を衛兵に預けてしまった。

てっきり、命令するな、とか言って刀を持ったまま強引に部屋に入ると思っていたテトラはびっくりしてローさんを見るが、ローさんは機嫌が悪そうでもなく、いたって普通の表情だった。

ローさんに倣うようにしてシャチさんも服から拳銃やらナイフやらを取り出して衛兵に預けてしまう。

(っていうか、シャチさん一体どこにそんなに武器を隠し持っていたんだ…)

びっくりするほどたくさんの武器を渡された衛兵さんも持ちきれなくて困ったように立ち尽くしていた。

「あれ。まだあるんすけど。持ちきれないなら持って入ってもいいんすか?」

とわざとらしく聞くシャチさんに思わず笑みが浮かぶ。

シャチさんの言葉にうーん、と少し考えていた衛兵さんは、しょうがなく仲間を呼んで手伝ってもらうことにしたようだ。
うん。賢明な判断だ。

衛兵二人にめいいっぱいの武器を預けて三人と一匹(二人と二匹?)はようやく謁見の間に入る。

中は思ったよりも狭くて、一番奥の玉座に王様らしき人が座っていた。

「おお。そなた達が例の海賊達か。よくぞよくぞ連れてきてくださった」

部屋に入ったとたん、王様が両手を広げてこんなことを言うから、私の頭はクエスチョンマークでいっぱいだ。

それは私だけではなかったらしく、シャチさんが口を開く。

「俺ら何にも聞いてないんすけど。何を連れてきたっていうんすか?」

そう言うと、王様はポン、と両手を打って答える。

「そうか。まだ話を何も聞いてないのだな。実は、我が国が待ち望んでおったのはそれなのだ」

王様の人差し指は間違いなく私に向けられている。

「どういうことだ」

ローさんが何とも普通に尋ねる。

「うむ。我が国では雪豹が王族のシンボルで、神聖な動物とされているのだ。彼らのお蔭でわが王国は繁栄されてきたといっても過言ではない。しかし…大海賊時代が始まってからというものの、我が国にログを溜めるために海賊達が多く立ち寄るようになり、よりにもよって、毛皮が価値になるからとどんどん野生の雪豹を密猟してしまったのだ。おかげで、この国に雪豹は一匹もいなくなってしまった…。他の島から捕獲してこようと海にでた者たちもおったのだが、未だ一人も帰ってこない。もう、雪豹を我が国に戻すことは絶望視されていた」

国王は袖で涙を拭うような仕草をしてから続きを話す。


「しかし、そんなところへそなた達が雪豹を連れてきてくれたというではないか!まさか、海賊により絶滅させられた雪豹が海賊により戻ってくるなど考えもせんかった!本当にありがたいことだ」

(なるほど…それで私を見て突然態度が変わったのか)

納得はしたものの、国王には非常に気の毒だが、私はこの国に住むつもりは全くない。

「嬉しがっているとこ悪いが、こいつは俺のもんだ。こいつをこの国に譲るつもりはねェ」

うん。私もそのつもりだったけど、ローさんがそう言ってくれるとなんだかすごい嬉しくなってしまう。

思わずしっぽをゆらりと揺らしたテトラだったが、次の国王の行動に思わず固まる。

国王はそうか、と呟くとぱちんっと指をならした。

その途端、周りにいた衛兵達がばっとローさん達を取り囲んで槍を向ける。

「それならば、仕方がない。確か、そなた達は補給をしたいのだったな。このまま雪豹を大人しく置いていくならログが貯まるまでに積めるだけの食糧と酒を積んでおこう。もちろんただでとも言わん。1億ベリーの報奨金も出す」

国王はにやりと笑って言った。

「もし、それでも拒否するなら、今すぐお前たちの海賊船を沈めてやる。既に城の大砲は全て海賊船に標準はあっている。あとは私が合図を送るだけだ。さぁ、どうするかな?」


(嘘…)

まさか、こんなことになるなんて思わなかった。

せっかく皆の役にたてたとおもったのに結局迷惑をかけてるじゃないか。

どうすればいいのかとうろうろと廻ってみたけど、もちろん状況に変化はなし。

皆と一緒にいたいけど、こんな条件出されたら…

ごくりと唾を飲み込んでローさんの答えを待つ。

ローさんが出した答えは…

「分かった。その代わり報奨金は3億ベリーだ」

目の前が真っ暗になった気がした。

もちろん私一人の為に船員全員を危険にさらすわけにはいかない。頭ではわかってるけど、心が追いつかない。

こんなところで皆と離れたくない。
ローさんと…離れたくない。

そんな私の気持ちも知らずに王様は良かろう、と満足そうに頷いた。

「それでは、ログが貯まるまであと一日、どうぞ我が城でごゆるりとおくつろぎください」

衛兵達に槍を突きつけられたまま去っていくローさんを私はじっと見つめた。
もしかしたら、もう会えないかもしれない。
涙が滲む目でローさんを見つめていたら、一瞬ローさんが振り返って―

にやりと不敵に笑うのが見えた。



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