eighteen hop!


「シャチー、テトラ見なかった?」

べポの問いかけに俺は首を傾ける。

「見てないけど…どうかしたのか?」

「うーん。もうテトラ、医務室から出てもいい時期だと思ったから、天気も良いしテトラと一緒にお昼寝したかったんだけど…」


テトラが島で怪我をする前は、よくべポとテトラは2匹で日差しの良い時は仲良く甲板でひなたぼっこをしていたのだ。

怪我をしてからはいろいろあってテトラはずっと医務室にこもりっぱなしだったので、しばらくテトラと一緒に昼寝をするどころか医務室から出てこないから顔も見れないのだ、と悲しそうに言うべポに俺は首を傾げる。

「でも、この間、俺、テトラが甲板歩いてるの見たぜ」

え、ホント!?と驚くべポにシャチは頷く。

「あ、でも、俺が見たのもその一回だけだったな。確かに最近テトラ見ないよなぁ」

前に見たときなんか目の下に大きな隈つくってたんだぜ、と笑いながら言うと、べポはえぇ!?と驚いた。

「それって全然寝れてないってことだよね!?やっぱりあの戦闘の後からテトラ変だよ…」

俯いて悲しそうに言うべポはつくづくお人好しだな、と思う。
俺なんかテトラの隈を笑っただけだというのに。


「眠れないならなおさらお昼寝に誘わなくちゃ。シャチ、テトラ一緒に探してよ」

「いいけど…でも、お前医務室は見たのか?」

根本的なところを指摘すると、べポはうん、と首を振る。

「医務室も食堂もマストとか船尾とかバケツの中とか、テトラが行きそうなところは全部探したんだけど…」

前から思ってたんだが、なんでベポはあいつがバケツに入れると思い込んでんだ?

まあ、そんな疑問は置いといて、本当にいないのか…。もし、どこにもいなかったら、寝不足のせいでふらふらしてたし、海に落ちてしまった可能性もある。
これはちょっと本格的に探さないとな。

「よし。とりあえず、もう一回医務室から探してみるか」

そう言うと、べポは嬉しそうにうんっと頷いた。




「医務室のシーツ全くしわがねぇな。テトラはここにはしばらく来てなさそうだな」

数日前までは確かにここで寝ていたはずなのだが。
俺はテトラが寝かされていたベッドを手で触って確かめてみたが、ふと、目が枕に向く。

「なんだ…?」

枕の下から何かがはみ出しているのに気づいた俺はそれを引っ張り出してみる。

「どうしたの?シャチ」

後ろから覗きこんで来たべポが尋ねるが、俺は首を傾げてそれをべポに見せた。

「これ…手配書?なんか変な手配書だね。名前は書いてないし、十年も前のだよ、これ。写真が暗くてよく分かんないけど、写ってるのもまだ小さい子供だし。」

べポも首を傾げる。

「この前俺がテトラの暇つぶしに手配書の束を持って行ってやったんだ。多分その中の一枚だと思うんだが…」

なんでこれが枕の下に隠すように置いてあったんだろうか?

俺は疑問に思いながらも、もともとキャプテンの持ち物なのだから返さないとまずいな、と思って手配書を丸めて腰のベルトに挟んだ。



「いねぇ…」

「いないねぇ…」

結局あれから船のほとんどを見て回った。
しかしどこを見てもテトラの姿はなかったし、誰に聞いてもここ数日はテトラの姿を見た者がいないのだ。

「こりゃ、まずいかもしれねぇな。キャプテンに報告するか…」

「そうだね。キャプテンに…」

そこで二人ともはたっと気づく。

「「キャプテン!!」」


ダダダッと廊下を船長室までべポと走る。

扉の前で息を整えると、トントンッとノックする。
すぐに、入れ、とキャプテンの声が聞こえて、失礼しまーす、と扉を開ける。

「テトラ!」

べポがキャプテンの膝の上で伏せているテトラを見つけて嬉しそうに声を上げたが、キャプテンに静かにしろ、と注意された。

「キャプテン、テトラここ数日ずっとここにいたんですか?」

尋ねると、ああ、とキャプテンが頷く。

「どうやら三日以上寝てなかったようだな。だいぶ衰弱してたからもうしばらくはここで寝かせてやらねぇとな」

ゆっくりとテトラの背中を撫でながら言うキャプテンの顔もいつもより疲れてるように見えて、まさかと思ったが一応聞いてみた。

「テトラがキャプテンの膝でずっと寝てるってことはキャプテンもここ数日ずっと動いてないんですか?」

恐る恐る尋ねると、キャプテンはなんてことないようにああ、と軽く頷いた。

そういえば、確かにキャプテンの顔もしばらく見てなかった。キャプテンはよく本を読むのに夢中になると部屋にこもりっぱなしになることが以前からあったのであまり気にしていなかったが。

「飯はコックが運んできてくれたしな。動くとコイツが目ェ覚ましちまうから動けなかったんだよ」

ってことは、ここ数日間キャプテンはテトラを膝に乗っけたままずっとソファから動いてないってのか。

改めてキャプテンの凄さに感服した俺は思わず両手を合わせてキャプテンを拝んでしまった。

キャプテンからは、何やってんだお前、と可哀想な目で見られてしまったが。



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