fifteen hop!
「キャプテン!こっちだよ!」
ペンギンが連れて来たローに向かってべポは慌てて手を振った。
不機嫌そうにツカツカとテトラに近づいたローにも、ガウゥ!とテトラは威嚇した。
「どうやらテトラは正気じゃ無いみたいで俺らじゃどうしようもないです。これがもし怪我からの出血だったら危険ですし。どうしますか?」
ペンギンがローに尋ねるが、ローはペンギンに答えることなく、威嚇するテトラに近づいた。
ローは屈んで、牙を剥くテトラの顔をじっと見つめる。
おびえた目をして自分じゃないどこかを見つめて唸るテトラにローは眉をひそめてすっと手をテトラの頭に伸ばした。
「ガウッ!」
伸ばされた手に##name_1##は勢いよく咬みついた。
「キャプテン!!」
手から血を流すローを見てべポとシャチが慌てて叫ぶが、ローは怯むことなくテトラを見据えた。
「テトラ」
ローに静かに呼びかけられると、ローの手をくわえたままテトラはビクッと反応した。
「テトラ」
もう一度ローが静かに名前を呼ぶと、定まらなかったテトラの視線がわずかに震えると、ゆっくりとローを見つめた。
「なう…」
(ローさん…)
小さく唸ってローの手を離してテトラはぺろりと流れるローの血を舐めると、どさりと倒れて気を失った。
ローは、気を失ったテトラを触診すると、少し安心したように息を吐いた。
「これは返り血だな。テトラの怪我じゃねェ」
そのローの言葉にべポもシャチもペンギンもふぅっとため息をついた。
「とりあえずこいつを洗ってくる。後のことは頼むぞ」
テトラを抱えあげて船室に入っていったローを三人は返事を返して見送った。
「やっぱりすげぇな。キャプテン」
「うん。僕たちじゃどうしようもなかったもんね」
べポとシャチは感心したように呟く。
だからキャプテン呼んだんだろ、とペンギンが呆れたように二人を見てさっさと後片付けをするぞ、と促したのだった。
ゆっくりと目をあけると、まず目に入ったのは心配そうに覗き込むべポの顔だった。
「テトラ!良かった、もう大丈夫?」
べポにくしゃっと頭を撫でられ、ゆっくりと部屋を見渡すとシャチさんもペンギンさんも心配そうにこっちを見ていて、私が目を覚ますまでずっと見ていてくれたみたいだった。
あれ、私どうしたんだっけ。
なんか頭に靄がかかって何が起こったのかよく思い出せない。
とりあえず元気には違いないから首をもたげて、がう!と返事をすると、べポは嬉しそうに笑ってテトラをギュウッと抱きしめた。
「目ェ覚ましたか」
暗闇の中で聞いた暖かみのある低い声にくるりと首を回して扉の方を見ると、ローさんがゆっくりと入ってくるところだった。
(ローさん!)
何だかすごく嬉しくて、ぱたぱたとしっぽを振って近寄ってくるローさんを見つめていたが…
ガツン!
あまりにも突然で不意打ちの衝撃に、テトラの目にじわっと涙が浮かんだ。
「部屋から出るなっつっただろうが」
涙目でローさんを見上げると、ローさんはそう言って握った拳を開いてわしゃわしゃと首を掻いてくれた。
頭は痛かったけれど、首を掻いてくれるその手はすごく気持ちが良かった。
思わず目を細めて喉を鳴らしたが、その目がローさんの手に巻いてある白い包帯を捉えてハッと身を固くする。
(その包帯…)
はっきりとは思いだせないが僅かにあるローさんの手を咬んだ記憶。
申し訳なくてぺろりとその手を舐めると、ふっとローさんが笑った。
「飼い猫に手を咬まれたぐらいどうってことはねェ。気にすんな」
その言葉とローさんの笑顔が嬉しくて、ぐいぐいローさんの手に頭を擦りつけると今度は、調子に乗んな、と軽くデコピンされた。
だからローさんのデコピンは地味に痛いんだってば。
しかも、あんなセリフの後でデコピンって…。
もしかしてこれが巷で噂のツンデレかしら。
無人島で人間たちのいろんな情報を運んでくる渡り鳥が言っていた。
いわゆる萌えキャラ!だと言っていたが…
ローさんって萌えキャラだったのかしら?
新しいローさんのキャラ発覚に思わず胸をときめかせていると、ローさんにぐわしっと頭をつかまれた。
そのままギリギリと指を食い込まされて、あまりの痛みにギャインッと鳴き声を上げてしまった。
「キ、キャプテン!テトラかわいそうだよ!」
そんな私を見かねたのか、べポが慌ててローさんを止めてくれた。
ありがとうべポ!
べポは私の救世主だ!
「ああ。なんかこいつが頭の悪ィこと考えてる気がして、ついな」
悪びれるふうもなくローさんはそう言って手を離してくれた。
あれ?何で分かったんだろ。前にもこんなことあった気がする。
もしかして、私ってテレパス使えるんだろうか?
試しに
(お腹すいた!ごはん食べたい!大きな骨付き肉が食べたい!)
とローさんに念じて訴えかけてみたが、ローさんは全く気付いた様子もなく椅子に腰かけてしまった。
どうやら失敗のようだ。
テトラはショックではぁっと大きくため息をついたのだった。
(骨付き肉…食べたいなぁ)
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