fourteen hop!


甲板の上ではすでにもう戦闘はほとんど終わっており、ハートの海賊団が相手の海賊の残党の後始末をしていた。


しかし、そんな様子も目に入らぬままテトラはふらふらと甲板を彷徨っていた。


そんなテトラを最初に見つけたのは、倒した敵の足を引きずって海に投げ捨てていたシャチだった。

テトラの真っ白な毛が赤く染まっているのを見たシャチは慌ててテトラに駆け寄った。

「テトラ!おい!お前怪我したのか!?」

呼びかけても反応のないテトラにシャチは慌てて手を伸ばしたが、牙を剥いて威嚇してシャチを拒絶するテトラに驚いて手をひっこめた。

「どうした、テトラ。俺だ。シャチだ」


手を出すと咬まれそうなテトラの剣幕にシャチは落ち着け、と声をかけるがテトラはシャチを認識していないように唸って牙を剥くのだった。



「ペンギン、べポ!こっち来てくれ!テトラが…」


どうしようかと困って周りを見渡すと、丁度ペンギンとべポが敵船から略奪し終わって帰ってきたので声をかけた。

その声に慌てて駆け寄ってきた二人にもテトラは威嚇して近づけさせなかった。


「テトラ血だらけだよ!このままじゃ死んじゃうよ!」

べポもやっぱりどうしたらいいのか分からず、ただおろおろと手を出したり引っ込めたりするだけだった。

「俺たちが分かってないみたいだな。目がこっちを見ていない」

ペンギンが冷静にテトラを観察して言った言葉に、シャチが、じゃあどうすればいいんだよ!?と詰め寄ったが、その頭をペンギンにぱしんとはたかれる。

「落ち着け。シャチ。とりあえずキャプテンを呼んでくるからお前らはあまりテトラを刺激しないように見とけ」

そう言ってペンギンはくるりと踵を返した。

残されたシャチとべポは、ただテトラの様子を見守ることしかできなかった。







自分はただ暗い中を一人で走っていた。

この闇を私は覚えている。

後ろから迫ってくる幾つもの人影から逃げるように必死で走っていたが、だんだん暗闇が自分にまとわりついてきて足が動かなくなってきた。

ついに、一歩も動けなくなった自分の周りを人影が取り囲むのをぼんやりと感じた。


「お前が殺した」

「私たちを殺した」


口々に聞こえる抑揚のない声を聞きたくなくて、私は両手で耳をふさいだ。

「違う…!私じゃない!あいつがやったの!」

恐怖から目もつぶりながら叫んだが、その瞬間、人影はどろりと闇に溶け、かわりにどこからともなく笑い声が響いた。


「違うね。俺は力を貸してやっただけだ。お前がやったのさ」


遠くから聞こえるような近くから聞こえるようなこの声に私は必死に首を振った。

「違う違う!あんたがやったのよ、私の体を使って!」



「そうやって俺のせいにするがいいさ。だが事実はかわらねェ。自分でも本当は分かってんだろう?」


だんだん近づいてくる声を拒絶するようにもっと強く耳を抑えるがどんなに耳を抑えても遮ることのできない声にただ怯える。




「どっちみち俺はお前だ。…なあ、そうだろう?」


囁くように響いた声は自分の中から聞こえていた。



「いやあぁぁああ!!」



ただただ怖くて悲鳴をあげる私の耳にふと、自分の体から響く声とは違う、私を呼ぶ声が聞こえた気がした。


テトラ、と降ってくるその声はひどく暖かくてその声に縋りつくように私は手を伸ばしたのだった。



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