twelve hop!


「テトラー、いるかー?」

部屋に入って来たシャチさんの声に仰向けに寝ていた体をごろんと起こす。

シャチさんはこっちを見ると、お!首輪似あってんな、と頭をくしゃくしゃとなでてくれた。
嬉しくてグルル、と喉を鳴らすとシャチさんは良かったな、と笑った。

「そうだ、お前が暇だろうと思って持って来たもんがあんだよ」

それは嬉しい!こういうところで気が効くからシャチさんって好きなのよね。

なんだろうと、わくわくしながらシャチさんを見てると、シャチさんはほら、と何枚か束になっている紙を出してきた。

それぞれに大きく人の写真が載っているこの紙は手配書だった。
以前いた島にもカモメが時々落としていくこれがどうかしたのかとシャチさんを見ると、シャチさんはその紙の束から一枚を取り出して見せてくれた。

「これはな、キャプテンの手配書だ。どうだ、かっこよく写ってるだろ」

まるで自分のことのように自慢げに差し出されたその紙には確かにかっこいいローさんが写っていた。


(ローさんって賞金首だったんだ…。賞金額は…)

「キャプテンはな、死の外科医っていって2億の賞金首なんだぞ」

(に、2億…!?)


信じられない。確かにローさんは相当悪そうな顔をしているけどまさか2憶とは…。

目を疑って何度も手配書を見るテトラにシャチさんは続ける。

「キャプテンは悪魔の実の能力者だからな」

(あ、悪魔の実…?なにそれ)

知らない言葉に首をひねって唸る。
すると、シャチさんは、お前に言っても分かんないか、と苦笑してぽんぽんと頭を撫でた。


「キャプテンは悪魔の実っていう実を食って特別な能力を使えるようになったんだ。お前も見ただろう?人がバラバラになったりするヤツ」

確かに、前の島でローさんは海兵をバラバラにしてたっけ。あれは悪魔の実の能力だったのか。

ってことはローさんが去り際に言っていた一言は脅しでも何でもなかったんだ。
抜け出してたらほんとにバラバラにされるところだった。危ない危ない。

納得して頷くとシャチさんは、ホントに分かってんのかお前?と笑う。

「ま、でも悪魔の実を食べると海に嫌われてカナヅチになっちまうんだとよ。海に落ちたら死んじまうし、味はとにかくまっずいらしいし、俺は絶対食いたくねェな」

そういってシャチさんは腰かけていたベッドから立ち上がる。

「さて、俺はもう仕事があるから行くな。それ後で取りに来るから絶対破るなよ。キャプテンの勝手に持ち出して来たんだからな」

テトラは分かってますよ、と頷いてシャチさんを見送った。



(さてさて。最近はどんな賞金首さんがいらっしゃるのかしら)


器用に前足で手配書を1枚1枚見ていく。

(あっ。この人前の島であったキッドさんだ)

忘れられない赤い髪に怖そうな顔。間違いなくキッドさんだった。おまけにキラーさんまで賞金首だった。

(しかも、賞金額半端ないのね、この人たち…)

そんなに悪い人には思えなかったけど、キッドさんなんかはローさんよりも上の金額だ。危うくこの人たちに飼われるところだったのかと思うと、ちょっと怖くなった。

(次は…何この子!かわいい!)

思わず目を輝かせて手配書に見入る。麦藁帽子をかぶってにんまりと笑う少年はとても凶悪そうには見えなかった。

(いつか会ってみたいなぁ)

ぼんやりとそう思いながら、次々と手配書を見ていく。



その手が、ある一枚の古ぼけた手配書でピタッと止まった。

(…なに…これ…?頭、が、いたい…)

10年前のぼろぼろの手配書。名前の記入欄は空白。写っている人物は…


テトラはぐらりと世界が揺れた気がした。

これはだめだ。この手配書は…



テトラはその手配書をそっと口でくわえると他の手配書の束から抜き出してベッドの枕の下に隠した。

(自由に動いても良くなったらこんなもの早く海に捨ててしまおう)

そう決心して、まだどくんどくんとうるさく響く鼓動を落ち着かせるように大きく息を吸ったのだった。



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