eleven hop!
(暇だー。暇すぎる)
テトラはベッドの上でごろごろと転がって、椅子に座って本を読んでいるローさんに精一杯アピールするが、ローさんは全くの無反応。
転がるのにも疲れたテトラはむすっとふくれてごろりと寝そべり前足に顎を乗っけてじーっとローさんに目で訴えかけるがこれにもローさんは視線も上げずにぺラリとページをめくるだけだった。
テトラはローさんの気を引くのはあきらめ、溜息をついて先ほどの出来事に考えをめぐらすのだった。
気持ちの良い海風を満喫していたテトラは結局べポには見つからずにすんだと喜んでいたのに、べポが呼んだであろうローさんにあっけなく見つかってしまった。
甲板に出てきてすぐに私を見つけたローさんには流石だな、と感心したが、相当怒っているのが見て取れるローさんの目つきにびびって私はローさんを見なかったふりをしてマストから降りようとしなかった。
というか絶対降りたくなかった。降りたら絶対殺されそうだもの。
だから、どうせローさんもここまでは来れまい、と余裕をこいて平和な空を眺めていた。
…はずなのだが。
「シャンブルズ」
テトラは目をぱちくりと瞬かせた。
自分を抱えるこの細いがしっかりしている腕は間違いなくローさんのもの。
なぜマストで空を見ていた自分がローさんの腕の中にいるのでしょうか?
クエスチョンマークでいっぱいの頭でそーっと首をあげてローさんの顔を見ると、ローさんはにやりと笑った。
「医者の言いつけを破るとは覚悟はできてるんだろうなぁ?」
それはもう素敵なほど不気味な笑みでテトラは自分の身に起きた不思議な出来事など一瞬で忘れて、必死でローさんから逃げ出そうと暴れたが、ローさんはより一層強く首を掴んで否応なしに医務室に向かってしまう。
(ぐぇっ…ロー、さん、苦しい…)
息ができないほど思いっきり掴まれたテトラは涙目で、様子を見ていたべポに助けを求めたが、べポは何が楽しいのか笑いながら手を振っただけだった。
さては、べポが探していた時に素直に出て行かなかったお返しだろうか。
実はべポって根に持つタイプだったのか。
そんなことを考えているうちにローさんは医務室に入ってテトラはベッドの上にドサッと乱暴に落とされる。
テトラは慌ててばっと体を起こして逃げようとしたが、なんとローさんに私の自慢のしっぽをガッと踏まれて動けなくなってしまった。
しっぽを土足で踏むなんてこの人はどういう神経をしているんだ!とローさんを見ると、ローさんは物凄く楽しそうな笑みを浮かべてこちらを見下ろしていた。
(やだ、この人危ない人だ)
今更ながらそんなことを思いながら、これから来るであろう衝撃に耐えようとテトラはギュッと目をつぶった。
しかし、想像に反して痛みはやってこない。代わりにギュッと少し首がしまるような感触にテトラは恐る恐る目をあけた。
(あれ?)
首元を見てみると、今まではなかった赤い色がちらつく。
なんだろう?と首をかしげてローさんを見上げると、ローさんは満足そうに笑った。
いつものにやりとした笑みではなく、柔らかな笑みで思わずドキドキしてしまう。
「お前はすぐふらふらどっか行くからな。俺の物だって証だ」
言われてもう一度首元をグイッと見ると、それが首輪であることが分かった。
似合っている、とポンと頭に手を置いたローさんの言葉が嬉しくてテトラはパタパタとしっぽを振ったのだった。
ローさんが遊んでくれず、ふてくされて横になっていたテトラだが、どうしても赤い首輪に目がいってはふにゃりと笑ってしまう。
ローさんがくれたということも、似あうと言ってくれたことも嬉しくてしょうがないのだ。
しばらくすると、ローさんは本を読み終わったのか立ちあがって部屋から出ていこうとした。
たいしたお仕置きもなかったことだし、ローさんの見張りがなくなったらまた抜け出そうかなー、なんて思ってたらローさんは扉に手をかけたままこちらを振り向いて一言。
「次抜けだしたらバラバラにするからな」
思わず震え上がるほどの恐ろしい脅しに、テトラはおとなしくベッドに伏せて何度も頷いたのだった。
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