甘いもの

衛宮邸の台所から漂ってくる芳香にスンと鼻を鳴らし、名前は笑顔を浮かべた。今日は気まぐれにお菓子作りを始めたアーチャーのおこぼれに預かりに来たのだった。

「名前さん、今日ランサーは居ないんだな」
「うん、バイトだよ。それに、常に一緒に居る訳じゃないんだからね」

息が詰まっちゃうって、と名前は笑うが、士郎と名前が遭遇するときの八割はランサーと一緒である。

そんな会話をしていたら、目の前には焼きたてのマロンパイが。アーチャーが几帳面に切り分けて、名前はフーフーと冷ましながらそれを頬張った。次の瞬間の満面の笑みで、アーチャーも思わず顔を綻ばせたのだった。

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