雨宿り

仕事帰り、突然の夕立にみまわれた名前は、駆け込んだある喫茶店の軒先から空を見上げた。夕立と言えど、少しかかりそうだ。

「仕方ない、か」

ガウェインに連絡をすればすぐに迎えに着てくれるだろうが、そこまでするほどでもないだろう。雨が止むまではここで雨宿りしようと覚悟を決め、店のドアを開けた。

「いらっしゃい!って名前じゃねえか」
「あれ、ランサー?バイト?」
「ああ。お前は雨宿りってとこか」
「うん」

ポツポツと話をしながらも席に導かれ、席に着くとメニューを差し出された。

「ガウェインは、呼ばないのか?」
「わざわざ来てもらうほどでもないかなって」

そうか、と少し安心したような顔を見せたランサーに内心でクスリと笑い、メニューの中から紅茶を頼んだ。

「まあゆっくりしてけ」
「うん、ありがとう」

時間帯のせいか、店内にはパラパラとしか客はいない。名前は鞄から本を取り出し、ランサーの持ってきた紅茶をのみながら読書にいそしんだ。

ちょうど紅茶がなくなった頃、窓から外を見ると、既に雨は止んで日が射している。読んでいた本を閉じ、名前は伝票を持って立ち上がった。

「紅茶、美味しかった。また来るね」
「おう、待ってる」

そうして支払いを終え、店を出ようとしたとき、ちょうどドアが開いた。

「あれ?ガウェイン?」

息を切らせたガウェインが傘を二本持って入ってきたのだ。

「いつもより帰りが遅いので、」
「ごめん、雨宿りしてた」
「連絡をくださればもっと早く迎えにいけました」
「すぐ止むかと思ったから・・・」
「心配します!」

怒ったガウェインの説教を聞きながら、呆気にとられているランサーに手を振り店を出た。この忠犬は、わざわざマスターの気配を追って探しに来てくれたようだ。

日頃溜まっていたらしい心配なこともついでにお説教されながら、名前とガウェインはならんで家まで帰るのだった。



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