桜蘭*馨-初めてのシングル

馨がやっと狭い一人暮らしの部屋になれてきた頃、そろそろか、と馨は一人そわそわしていた。リビングの隣の寝室、少し覗いたことはあるけれど入ったことはない。しかし交際もだんだん安定してきたし、お互い慣れてきた。

「名前、泊まってってもいい?」
「え?今日?」
「うん」
「シングルベッドだよ?」
「………覚悟はできた」
「なるほど」

真に迫った顔で覚悟を語る馨に苦笑いである。そろそろ泊まりたい、と思った時からシングルベッドに二人で寝ることへの気持ちを徐々に作ってきたのだ。常陸院の自分の部屋では二人で寝れない(光がいる)し、名前の部屋にダブルベッドは置けない。つまり馨が覚悟を決める必要があったのだ。

「私はいいよ、光は大丈夫?」
「光とは前々から自立を目指して話してたし、大丈夫!今日の昼間にも話したし!」
「はいはい」

馨は一旦荷物をとりに帰宅するということで、その間に名前も用意しようと覚悟を決めた。どんな文句がでるか想像もつかない。

「光にちゃんとばいばい言ってきなよ」
「うん、ちゃんと言って、くるっ」
「泣くの早いから」



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