あるじが何故か引きこもってしまった<白剣>

※座に関する細かい設定は気にしない方向で行きましょう(`・ω・´)






中世の英霊が住まう区画から近代の英霊の居住区に向かう道すがら、ガウェインはクーに出会った。二人とも名前がここに来たばかりのころに早朝から押しかけ過ぎた所為で、午前九時前のアポ無し訪問を禁じられていた。因みに、深夜0時までに連絡をすれば九時前でもいれてもらえる。だが今日は二人ともきっかり九時に着くようにやってきたらしい。

「クー殿、今日も随分とお早いですね」
「お前もな」

皮肉混じりの言葉を交えつつたどり着いたのは、名前の近代的過ぎる座。トコトコと進んで行けば、こじんまりとした普通の近代的な一戸建ての家が。
ピンポーンと若干英霊の座には似つかわしくない音を鳴らしてみるが、反応がない。思わずガウェインは隣に立つクーを見てしまう。が、首を傾げられた。
ピンポーン。
2度目も反応無し。もしや死んでいるか。いや、ここはいわゆる死後の世界なのだから、それはない。

「名前ー!」

クーが遠慮も何も無しに叫んだ。ガウェインもそうした方がいいかと悩んでいたので、止めることなく事の先を見守る。

「名前ー!いないのかー!」

2度目に叫んだ後。
どたどたと走る音が聞こえてバタンと扉が開いたと思ったら、出てきた名前が何やら紙を扉に貼り付けて再び中に戻って行った。ご丁寧に鍵まで閉めて。

「「しばらく引きこもる。うち来んな」」

声に出して2人で読んで、しばらく呆然としていた。


あるじが引きこもりを始めてしまったようだ。


「名前に、会えない・・・」

ポツリと呟いたガウェインの言葉には、絶望と悲哀が入り混じっていた。




過ぎ去る事3日。
ガウェインは1人、己の座から出て円卓の騎士が集まるアルトリアの城へと来ていた。周りが若干ワイワイとしている中、ワインの入ったグラスを見つめてボーっとしている。
そんなガウェインのもとに、この城の主でありガウェインの本来の王であるアーサー王、アルトリアが歩いてきた。反射的に椅子から立ち上がり、その場に跪く。

「ガウェイン、そのようにする必要はありません。椅子に掛けなさい」
「ありがとうございます」

アルトリアに促されて元居た椅子に再び腰掛けると、その隣の椅子を引きながらアルトリアは笑顔を浮かべて口を開いた。

「名前が来ていますよ」
「名前、が?」
「貴方の座に行っても居なかったから、と。もうすぐここに着くでしょう」

そして扉を開けて、ここの使用人に連れられた名前が入って来た。どことなく疲れている印象を受けたが、ガウェインを見るとすぐに笑顔が戻る。

「ガウェイン!3日ぶり!」
「名前・・・」

ガウェインは寄ってきた名前を座ったまま抱きしめ、腹に顔をうずめた。アルトリアはその様子を微笑んで見ている。

「寂しかった」
「うん、ごめんね。どうしても緊急に仕上げたいものがあったの」
「仕上げたいもの、ですか?」
「うん。ふきっさらしの戦闘機や戦車の倉庫。図面引いて今ガイアに提出してきた」
「そうでしたか・・・」

心底安心した、というガウェインの笑顔につられたのか、名前も笑顔を浮かべた。ガウェインはサラサラとしたプラチナの髪を撫でられ、なんとも気持ちがいい。

「久々に一緒に寝ようか」
「え・・・」
「いや?」
「滅相もありません。嬉しいです」
「そっか。私も嬉しい」
「名前・・・」
「ん?」
「名前」
「・・・うん」


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