英霊には宝具が必要だけれども<赤弓> 名前が英霊の座に来てからしばらく、自分が英霊になってしまったということを日々かみしめている様子だ。いつものようにエミヤのところで朝食を美味しくいただいていた名前が、唐突にこんなことを言い出した。 「私ってさ、ライダーとキャスターになり得るわけじゃん」 「ああ、そうらしいな」 「私の宝具、なんだとおもう?」 「君の座にあるあの戦闘機とかじゃないのか?」 「うーん、それがね?」 名前はポケットからごそごそと一枚の紙を出してきた。エミヤがチラリとそれを見ると、「宝具目録」などと書いてある。 「この英霊の座に来た時に渡されたやつなんだけど、私の宝具いっぱいあるんだよね」 名前が読み上げた内容を聞くと、ライダーとして召喚されたときは先ほどエミヤが言った通り名前が理論を提唱していたという兵器を積んだらしい戦闘機、軍艦、そして戦車がそれにあたるらしい。しかしキャスターとして召喚された場合、それらの宝具だったものはただの武器となる。 「私の宝具、最初にガウェインを召還したときに使った魔法陣だって。つまり、宝具、ガウェイン!」 ドヤァという表情だが、それは宝具としていかがなものだろうか、とエミヤは考えざるを得ない。 「それは、マスターにあまりに過度な魔力負担を強いるものではないのかね?」 「そうなの。私の召還で必要な魔力、さらに私が宝具を使う魔力、加えてガウェインを召還、一定時間現界させる魔力とガウェインが戦闘する魔力が必要なのよね〜。生前の私レベルの魔力持ちでも意識もうろうとするんじゃないかな?」 「・・・それは、宝具として使うことはほぼ無理なんじゃないかね?」 「そうだね〜、私がライダーとして現界できたらなにも気にすることはないんだけどね!」 名前の宝具がガウェインになってしまうのは致し方ないことだろう。長きにわたって一緒にいたこと、そしてそのガウェインを名前が一番の武器として用いていたこと。なにより魔術師としての名前の一番の成果はガウェインを召還し、ついには聖杯の助けなしでの現界を可能としたことにある。 「・・・そろそろ時間じゃないのか」 「そうね、うーん、・・・今日は士郎くん家でゴロゴロしてたいからなー」 「ガウェインはどうするんだ」 「今から使い魔で呼ぶよ!畳サイコー!」 ガウェインがもしその聖杯戦争に参加していた場合、どうするのだろうか。それは今は想定しようがないのだろうが。 *** たぶんヒロインの宝具はガウェイン。 |