時透無一郎の場合



「随分、面白い事してるんだね」
「と、時透君……」


 青ざめてどうしたの?あぁ、僕の事は気にせず続けて良いよ。

 特に何かを気にする感じも無く、ただ淡々と告げられる言葉に私は困惑するしかなかった。
その間に彼は片膝を立てて、自身が楽な姿勢であろう形をとって私の前に座った。
 凄く、この場から逃げたい。超逃げ去りたい、けれど許されないこの状況。しかも、私が逃げようとしてるのは鬼殺隊の一柱。詰んでる。


「結構似合ってるんじゃない?」
「そ、そうですか……?」


 うん、と短く答えると立てた膝に頬杖を付いて、こちらをジィっと見てくる。
 こ、こんなに観察されるとは思ってもみなかった。居心地悪いにも程がある。

 そんな居心地の悪さから彼の袖の長い隊服を脱ごうとすれば、静止をかけられた。


「ちょっと、何で脱ごうとしてるの?」
「いや、お返ししようかと……」
「急ぎじゃないし、別に今日は名前がそれ着たままでも良いよ」
「えっ!?」


 霞柱様のそんな突飛な提案に、目を大きく見開いた。意外過ぎるその提案に固まっていれば、ススッとこちらに更に寄ってきた。


「うーん、隠の服縫製係に君のを僕と同じ様なのにしてって頼んでみようかなぁ」
「っはい!?」


 近寄って色々な所を観察する様に見たかと思えば、爆弾発言をかます霞柱。
 急に何を言い出すんだこの上官!?というか普通に困るんだが!?彼の隊服は長めなので、慣れるにはそれなりの時間がいる。

 ブンブンと慌てて勘弁してくれという意味合いを込めて横に首を振れば、彼は少し笑った。


「冗談だよ……でも、それとは別に着てもらいたいからやっぱり一着は頼んでおくね」
「冗談だけど冗談じゃなかった!!」


 その後、本当に自分用の彼と同じ物が隠から届いた。のを、ニコニコとしながら着てね?と可愛い笑顔で言われる。




結果
霞柱は特に気にしてないけど、お揃いにすると特別感が出て良いなと思ったので手早く隠に頼み、物を用意して周りから囲む。
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