我妻善逸の場合



「うっっっそ、え?何、何なのコレェッ!!もしかしてこれ夢?夢なの?俺今もしかしてまだ寝てる??じゃないと可笑しくない??こんな幸運で幸福な事が普通俺の身に降り注いでくれるもんなの????」
「え、うるさ……」


 頬を自分で引っ張りながら喋る彼のその怒涛っぷりに、思わず冷静になれてしまった。
 そして私はこれ以上厄介な事にならない様にと、すぐ様バサリと着ていた彼の黄色い羽織を脱ぎ捨てた。一応、ちゃんと畳みましたとも。


「あ゙ーっ!?何で脱いじゃうのォ!?俺もっとちゃんと近くで見たかったんだけど!?目に焼き付けたかったんだけどォッ!!??」
「今の私が言えた義理じゃないけど、言ってる事が変態って気付いてる?」
「え、何処が??」


 キョトン、とまるで分かりませんと不思議そうにする彼は、ここだけ切り取って見ればとても純粋そうである。
 けれども実際はこうである、何とも残念。


「兎に角、少し気になって拝借して勝手に着たのはごめん!気になるならちゃんと洗って返すし」
「えっ!全然大丈夫だよ!?何なら今日一日着てても良いよ?」
「あっ、大丈夫です」
「何か冷たくない!!??」


 ギャンッ!と騒ぐ彼に、私は内心彼が騒ぎ立てるお陰で徐々に戻っていている冷静さを、必死に掻き集めている所だった。
 今はいち早く彼から逃れるべくそれじゃあこれで、と立とうとすれば光の速さで肩を捕まれ、さっきまで座っていた位置に押し戻されてしまった。


「待って」
「な、何」
「今度は俺からちゃんとお願いするから、もう一回着て?俺、名前ちゃんが俺の羽織を着てるところをちゃんと見たい」
「だからそれは、さっき断って……!」
「一日じゃなくて良いから、ほんの数刻、いや数分の間だけ……なんて」


 駄目?そう言い首を傾げた彼に私は勝てる筈も無く、気が付いたら首を縦に振って承諾してしまっていた。
 その後、御満悦な彼に手を握られて、暫くは開放されなかった。




結果
雷少年は最初は滅茶苦茶騒ぐけど徐々にハードルを下げて、確実に目的を達成する策士。
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