これの続きの様なもの。




「たんっっっじろう!いきなりで悪いけどちょっと匿ってくれない!?」
「んえっ!?そ、それは構わないが、いきなりどうしたんだ……?」
「話は後!とりあえず私は居ないって言って、まぁ多分バレるだろうけど、その場合は力技で完膚無きまでに力説して」
「わ、分かった、出来るだけやってみるよ」


 ある日の藤の家紋の家での休息日の事。
 炭治郎の部屋の障子をスパンっと我ながら良い音を立てて、挨拶も無しに口早にそう言った私は素早く押し入れに滑り込んだ。ついでにその際近くにあった禰豆子ちゃんが入っている箱も巻き込んだ。
 巻き込んだ理由は少しでも音が紛れれば良いというのが半分、安心したかったからが半分。……あ、中からカリカリって音がする。安心させてくれようとしてくれてるんだ、禰豆子ちゃん。優しいね、ありがとう。

 私が滑り込んだ後、すぐこの部屋の障子開き聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「たーんじろー、ここにさぁ誰か逃げ込んだりして来なかった?」
「さ、さぁ……?俺は何も知らないし、此処には誰も来ていないぞ!」
「ふーん、そっかぁ……でもじゃあ、何で炭治郎から慌てる様な音がするんだろうね?それと押し入れの方は……禰豆子ちゃん?あれでも何か混ざって、」
「そそそそそうなんだ!ここ最近押し入れが好きみたいでな!?よく箱ごと入っているんだ!中がどうなっているかは俺も!知らない!!」
「……そうなんだ、そんな禰豆子ちゃんも可愛いなぁ〜」


 そんな会話を終え、暫くして炭治郎がもう良いぞと押し入れの襖を開いた。私は炭治郎にお礼を言いながら箱を抱えて出る。……禰豆子ちゃんを巻き込んだ事は本当にごめんて、だからそんなジトリとした目で見ないで。ちゃんと説明します、しますから!


 ここ最近、善逸が可笑しい。
 鍛錬しようと思えばいつの間にか居て、普段なら悲鳴を上げて嫌がる筈なのに、この時だけは進んで相手役に志願してくる。それはまだ良い、私も助かるし。
 次に街へ出掛ければ勝手に着いてきて、色々とプレゼントされる。正直困惑するし、何なら半分は食べ物だから最近太ってきた。
 次に他の隊士と喋っていれば、割り込んできて引き離される。これは本当に辞めてほしい、時と場合によっては柱に対して喧嘩腰になるので私の心臓が違う意味で持たない。
 最後に、スキンシップが以前よりも増して滅茶苦茶激しい。気が付くと手を繋がれたり、腕にくっつかれたり、抱き着かれたり。

 だが、驚く事に私と善逸はそういう関係では無い。そういう風に見ていると言われた事はあるが、ハッキリと彼の口から好意の言葉を言われた覚えは無い。そう、好かれる努力とは言われたが好きだとは一言も言われていない。
 人によってはあれが告白になる人もいるだろう。それは勿論否定はしないし、実際あの時の私もそう思った。
 だが私は実際にきちんと言葉にしてもらえないと、彼の気持ちは私があの時に感じたもので合っているのかが、自信が持てない。
 本当に、善逸が私の事を恋愛的に好きなのか、分からない。

 なので、あの日の翌日から急にこういう風になってしまったので非常に困惑している次第だ。


「それは、大変だったな……正直、名前からすれば警官を呼んでも可笑しくは無いじゃないか」
「そう、そうなんだよ炭治郎!流石我らの炭治郎!!」
「だが……俺からすれば、善逸はあまり変わったようには感じないんだ」
「そりゃあ、炭治郎は善逸にそういう目で見られてないからね」
「そういう目、とは?」


 そう言いながら、真っ直ぐに純粋な目で此方を見据える炭治郎。……炭治郎さぁ、君その年齢でそれはどうかとは思うけれど私の中では全然ありの解釈なのでありがとうございます。
 とそんな馬鹿な事を思いながら、そういう目というのを簡単に説明した。

 すると炭治郎は成程!と途端に何かを理解したように笑顔になった。……待って、凄く嫌な予感がするのは何でだろう。


「そうかそういう事だったのか、ここ最近善逸の匂いが少し変わったとは思ってはいたんだ」
「待って、待ってほしい炭治郎、その先を私は聞いてはいけない気がする」
「あれは恋い慕う匂いの一種のだったんだなぁ」
「待ってって言ったのに!!!!」


 ワっと顔を覆い、私は嘆いた。これで何も言い訳は出来なくなった、何せ感情を嗅ぎ取れる炭治郎お墨付きのありがたいお言葉なのだから。強制的に、恋愛的意味で意識せざる負えなくなった。
 誠に勝手だが、ここに逃げ込んだ私自身と助けてくれた炭治郎に裏切られた気分だ。

 そうかぁと納得しながらも、ふと任務中の時の様に真面目な顔をした炭治郎が口を開いた。


「今は逃げている理由を詳しくは聞かない、だが見つかりたくないのなら早く別の所に行った方が良いぞ」
「えっいやだって、誤魔化せたんだよ、ね?」
「……いやあれは正しくは誤魔化されてくれたが正解なんだ、匂いで分かった」


 俺は、嘘をつくのがとても下手な様だから。前に嘘をついた時、善逸にも指摘された事があるんだ。

 うっそでしょ、まさかの温情?温情なの??私は必死に逃げていたのにアイツに余裕で逃がされてたって事?……は、腹立つ〜〜〜〜!!
 あーーーいっその事、背後に不意打ちの飛び膝蹴りでも喰らわせてやりたい気分なんだが????

 ……いやまぁ、私にもこうなった原因があるのは分かっているから何とも言えないんだけどさぁ!と座り込んで内心憤って暴れ回っていれば、匂いでそんな内情を察したのだろう。炭治郎は膝を折り屈んで、背を撫でながら私の事を宥めてくれた。
 ……あ、炭治郎の顔近い。赤く綺麗な目が良く見える、キラキラして曇りの無い透き通った瞳。

 呑気にそんな事を考えていたのが悪かったのだろう、そしてこの時の体制と間も悪かった。
 スラリと障子が開き、そこに立っていたのは見覚えのある黄色。


「やっぱり居るんじゃん、酷いなぁ炭治郎」
「えっ、善逸!?」
「ひぃぁ……つら、おわった…」
「ねぇ反応酷くない?そりゃあ俺だって少しは詰めすぎたかなとは思ってたよ?けどこれは無いよねぇ……」
「違うんだ善逸、これはただ宥めていただけで」
「それくらい音を聞けば分かるよ、炭治郎の音はいつも真っ直ぐで綺麗だ」
「あ、ありがとう」
「それでもさ、嫌なもんは嫌なんだよね」


 淡々と静かに話す善逸が珍しすぎて呆気に取られてしまい、逃げる瞬間を見失ってしまった。我ながら阿呆過ぎて笑える、いや全く笑えないのだけれど。

 そうしているうちに話は淡々と進み、コイツ借りて良いよね?とか俺には権利とか無いからな……とか、あれ待って?いつの間にか引き渡されてる?えっ嘘でしょ炭治郎!?ちょっと!苦笑しながら手を振って見送らないで!!!!
 そのまま引き摺る様に連れ出され、手はしっかりと善逸に握られている。多分逃げない様にって事だと思うけれど、正直手に力入れられ過ぎてめっちゃ痛い。前も思ったけれど、力加減下手くそ過ぎか。
 ズンズンと前を行く彼に対し私が全く歩こうとしないので、呆れた黄色がちゃんと歩かないなら強制的に横抱きにするよ?と脅し文句を言ってきた。それは是非とも遠慮したいので、そこからはちゃんと自分の足で歩きましたとも。
 勿論、口での反論も考えたが、そんな事をすれば確実に強制横抱きにされるなと悟り無駄な抵抗はしなかった。

 そしてあっという間に彼の部屋へ到着すれば、自然な動きで胡座をかくと私はその上に座らされた。驚く程に動きが自然過ぎて、全く違和感が無かった。なんなのお前、違和感切ったの?……自分で言っときながら訳分からなくなってきたな。

 そんな事を思っていれば、後ろから伸ばされた腕にギュウっと音がしそうな程に抱き締められた。すみません我妻さん、くっそ痛い。ミシミシ言ってる気がするんだけど。
 私の肩に頭を乗せて、深い溜息を一つ吐く。首に生温かい息がかかるのでやめてほしい、ちょっと普通に嫌だ。
 ……けれど抱き締められてとても痛いのに、何故か彼の強い想いが鮮明に伝わってくる感じがするから、本当にいやだ。


「っは〜……いやさ?俺だって急ぎ過ぎたとは思ってたんだよ?けどいきなり名前に逃げられるしさ?しかもやっと追い付いたかと思えばあんな至近距離だしさぁっ!お前ら思春期の意識とか距離感とか何処やったの!?距離感は特に炭治郎!!!!」
「うわ、めっちゃ早口」
「今ツッコむ所そこじゃないからな!?」
「いやだってこの状況になったら全部善逸には音でバレる訳で、それなら無駄な抵抗は体力の無駄ですし」
「おっまえ、変な所で現実的だな……抱き締められてるんだから少しは照れたりしろよ!」
「えっ、痛いから無理」


 それを聞いた瞬間、善逸がピシリと固まった。……あ、腕の力が少し緩んだ。
 そして、こういう経験少ないからあんまり慣れてなくてごめんなさいねェっ!と甲高い声で叫んだ。ねぇそこ私の耳だって気付いてる???

 うんまぁ、経験値に関しては何となくは察してはいたよね。だって力加減が滅茶苦茶下手クソだし、これ普通の女の子なら怪我させてるやつ。
 ゔー、と唸りながらグリグリと人の肩で頭を左右に動かす善逸。……摩擦で熱くないのかな。
 次第に肩を按摩されてるみたいだなと若干寛ぎ思考になっていれば、唐突に両脇に手を入れられてヒョイと持ち上げられた。軽々と、それはもう簡単に。
 そしてクルリと回転させると、今度は向き合った状態にさせられた。無論、素早く腕を背中に回されたので逃げられない。そして彼はまた私の肩に頭を乗せた。
 ……えっ、ちょっと待って?こんな簡単に軽々と持ち上げられたの?嘘でしょ??あれから鍛錬の量増やしたのに?もういっその事、重りをずっと付けといた方が良いだろうか。地面に落ちたら凹む位の重り付けといた方が良い??


 若干傷心しながらも、ふとこの状況について考える。一度整理しよう。

 私は善逸にそういう目で見ていると宣言されたが、確信の持てる言葉は一切言われていない。だが善逸のここ最近の行動は完全に付き合っているソレである。
 あの日の後、色々あってまぁ私もそれなりに善逸の事は意識してる。だから正直私から確信的な言葉を言ってしまっても良いのだが、何故かそれは違う気がしている。本当に何故だが分からないが。……というか今は何故か静かだな、いつもこれくらいなら炭治郎も苦労しないだろうに。

 静かな善逸となると、あの気絶状態か。
 正直眠っている時の善逸は、戦っているのも相まって普段より何十倍も格好良くなる。後、静かだし。うん、静かだし。

 そんな事を考えていれば、善逸がガバッと勢い良く顔を上げる。


「ねぇ待って今何考えてたの、いや俺の事っていうのは何となく分かるんだけど向けられてるのが俺じゃないっていうか……本当に何コレ!?」
「何言ってんの、大丈夫?」
「そんな可哀想なものを見る目で見るなァっ!!」


 ギャンッ!と叫ぶと、ガクガクと前後に揺らされた。
 何なんださっきから。さっきまでは抱き潰されそうになり、今度は前後に揺らされるとか私は何かの乗り物にでも乗ってんの?これ遊ばれてる?私、幼児に玩具にされてない??

 けど、どうやって説明すれば良いのだろうか。
 考えていたのは眠った善逸の事だが、あの状態は二重人格とは似て異なるものだろう。それに結局善逸の一部の事を考えていただけだからなぁ、どう伝えたもんかと揺れる視界の中考えていれば膨れっ面が視界に入った。
 ぷくっと頬を膨らませて、いかにも拗ねていますという表情。あえて言おう、お前は何歳児だ。
 だが目はユラユラと揺れていて、そこに浮かぶのは不安や怒り、寂しさ。まるで親とはぐれた迷子の子供の様。

 でも善逸のは、迷子の子供よりも余程タチの悪いものだ。その目の奥に、子供がする様な物じゃないモノが揺らいでいたのを確かに見た。
 誰を見ているの、俺を見て、俺を置いていかないで、俺の事だけを考えて。
 言葉にするならば、この様な感情達が渦巻いている。……本当、こんな熱烈な目をした幼子がいてたまるか。

 こんな目を向けられたって今の私にはまだ何も返せない、善逸の言葉を貰ってないから。
 ……なんと言うか、言葉にするのとか甘えるのとか変な所でヘッタクソだなぁコイツ。


「……はぁ、ヘタクソ」
「えっ、はっ?何が!?あっ、もしかしてまた力加減間違えてた!?」
「そうだけどそうじゃない」
「じゃあ何!?」
「私は善逸みたいに特別耳が良い訳でも無いし、そういう能力も無いから察せない、だからちゃんと何かを伝えたいのなら確信を持てる言葉を言って」


 その為の口でしょ、と私が彼の口元を指しながら言えば、彼はあうあうと迷う様に何度か口を開閉させてからギュッと固く閉じた。
 それから覚悟を決めたように、ゆっくりと口を開く。


「えっ、と、結婚して下さい……?」
「なんっでだよ飛びすぎだよ、いっその事三人一緒に恋柱の所に行って恋愛事をご教授願いなよ」
「待って嘘でしょあの二人と同じ括りにされるの!?」
「……あぁでも君は出会ったばかりの女子に求婚してたもんなぁ、それじゃあ一番最初に出る言葉がそれでも仕方ないかぁ」
「ちょっと!その哀れみの目止めてくれない!?凄い悲しくなるんだけど!!!」


 私達はそんな段階ではない、とバチりとデコピンをした。うん我ながら良い音が出た。
 それを喰らった善逸は痛みに震え、うっうっと呻きながら何故か顔を覆った。……額だけで良いのではと思ったのは私だけだろうか。

 これは暫く復活に時間がかかりそうだと思い、手持ち無沙汰解消に目の前の金髪を弄る事にした。
 両手で二つ結び、片手で一つ結び、おでこ部分を上げてデコ出し、小さい三つ編み。おぉ意外に出来るものだと感動しながら三つ編みを編んでいれば、唐突にブルブルと頭を左右に振られてしまった。あぁ…三つ編みが……。
 私から残念そうな音がしていたのだろう、不服そうな顔が目の前に現れた。


「……ちょっと、人が無抵抗な状態なのを良い事に遊ばないでくれますぅ?」
「いや案外楽しくなって、つい……それで今度は大丈夫?」
「うん、えっと……愛しています、とか」
「お前の頭の辞書は何枚か破れてんのか」
「言い方ァっ!!!!」
「それはそれで合ってるかもしれないけれど、そういう重めのじゃなくて!もっと一番最初の比較的軽めのがあるでしょ!?」
「えっ何!?軽めのってそんなのある!??」
「例えば君が大好きな女の子という字を合わせた言葉とかさぁ!」
「女の子!?女性と子供……あっ好き!?」
「正解!!長かった!!!!」


 お互い最後の方はほぼ叫びながら会話をしていたのでゼーッゼーッと息切れが凄い、今思えばこのやり取りって知り合いとかに聞かれてたら羞恥で死ねるやつだコレ。何でこんなに疲労感凄いんだろう、何やってんだ私……。

 そんな風に脱力していれば、俯いた彼から全然軽い言葉じゃ無いと呟く声が聞こえた。
 それを聞き返そうとすれば、不意に両の二の腕辺りを掴まれる。掴んだ相手を見れば比較的珍しい真剣な顔、そしてそれに隠し切れていない緊張の強ばった面持ち。
 けれど瞳はユラユラと揺らめいて今にも蜂蜜色から水滴が溢れ、零れ落ちていきそうだ。


「っすき、好きだよ、大好きなんだ……っ!」
「うん、」
「俺は叫ぶし、喚くし、よく泣くし……こんなだから自分に全く自信なんてものは無いけど、それでも、この気持ちはちゃんと胸を張れるんだ」
「……うん」
「俺とっ!…っ付き合って、くれますか……?」


 痛い位に強く掴まれた腕からは、彼の震えが伝わってきた。善逸は今にも泣きそう、というよりもうボロボロと泣いている。
 蜂蜜色からどんどん水滴が零れ、善逸の頬の形に合わせて流れていく透明の大粒の涙はキラキラと輝き不思議と幻想的に見えた。善逸には悪いが、なんて綺麗な光景だろうか。

 未だ溢れ続ける涙に私は隊服の袖を使いそっと掬う様に拭えば、スゥっと染み込んでいき直ぐに布地が水気を帯びてゆく。もう片方の手は親指や掌で優しく拭っていたのだが、そちらの手はもうビシャビシャだ。


「もう泣かないでよ、善逸」
「っむり、だってこれっ、勝手に出てくるんだよぉ……!」
「もし泣くなら、私が良い返事をしなかった時でしょうに」
「それも踏まえて今から泣いてんだよ!!!!」
「うっわ、何という後ろ向き思考……まぁ、その最悪は無いから安心して良いけど」
「……えっ、今何て、」
「私で良ければどうぞ末永く宜しく、我妻さん」
「うっそでしょそんなサラッと!?しかも今更敬語とか、他人行儀っていうか何か距離を凄い感じる!しかもこんな大事な時に名前呼びじゃないの!!??」
「好きだよ、善逸」


 息継ぎ無しの怒涛の勢いで口早に喋っていた彼はその言葉を頭で理解した瞬間、驚きで一瞬止まっていた涙が再びブワリと溢れ始めた。
 びゃーびゃー泣く善逸を見て胸の辺りが温かくなった気がして、これが微笑ましいという感覚なのかもしれないと初めて思った。

 今度はちゃんと手拭いを出して、暫く止まる気配の無い大洪水を起こしている顔面を拭いてやる。あーあー、顔面涙と鼻水でぐっしゃぐしゃ。本当に元の素材が勿体無いな。
 そんな何とも言えぬ心地の良いぬるま湯に浸かっている様な感覚に浸っていれば、前から彼がドンッと突進してきて、そのまま雑巾を絞るが如くぎゅうぅぅっと音がなりそうな程に抱きすくめられた。……ねぇこの人、力加減の話した事忘れてない?超痛いんだけど。
 そのまま抱き着きながらギャン泣きしている善逸は、頭もグリグリと動かす。だから痛いって言ってるよね!?あっ、ちょっと待って肩が滅茶苦茶濡れてきたんだけど!

 私達には雰囲気など全くもって無縁のものだな、という事を嫌という程に再認識をさせられた。痛かったスキンシップの仕返しに、私は彼の比較的柔らかい両頬をみ゙ーっと横に伸ばしながら深い溜息をついた。

 ……取り敢えず、本当にさっさと泣きやもうか、善逸。








落として、落ちました
「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -