「ハッピーハロウィン☆渡狸、」


「お、おう・・・?」


ニコニコと微笑みながら残夏は手を差し出してきた


…………


少しの沈黙のあとにおずおずと俺から口を開いた


「…な、なんだよ」


それを聞いた残夏は小さく溜め息をついて答えた

「言わなきゃわかんない?トリックオアトリート♪」

「は、はぁ!?…んな、いきなりそんなこと言われても菓子なんか用意してるわけないだろっ!!」


その時、俺がそう答えるのを待ち望んでいたかのように
残夏の口角が上がった。

ニヤリ、と効果音がつきそうなくらい、


「用意してなさそうだから言ったんだよねぇ」

その言葉を聞いて思わずビクっ、と肩が跳ねる

俺のその様子を見ては残夏は再び明るい声音で言葉を紡ぐ


「…という訳で、イタズラしちゃうよ?」

「へ、変なことすんなよっ」

「えー?悪戯、だからね、その約束は出来ないかなぁ」

ニヤニヤしながら答える残夏…




――――何考えてやがる…っ!!




「じゃー、渡狸。目瞑って」

「…え?」

「早く、」


急かされるように言われてどきまぎしながら目を瞑る



……な、何されるんだ俺…


不意にツー…と背中をなぞられた


「きゃああああああっ!」


思わず女みたいな声をあげてしまった

目を開けると残夏が顔を近付けてきて


「…まだ目、開けちゃ駄目だよ」


そう言いながら瞼にゆっくりとキスを落とされた

顔がかぁっと赤くなる


「う、な、何し……っ」

何もされないように、と手で押さえて抵抗していたら
残夏にあっさりと両手を取られ上手く身動きが取れなくなった



「悪戯中は抵抗しちゃ駄目だよ?」


うっすらと頬笑む姿をカッコイイと思ったのは
単なる気のせいだ、そうに違いない


***


ハロウィン、
来年の今日は絶対菓子を用意しようと思った




悪戯なんかされないように、





12/10/31
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