追走曲・27話以降、再会した一之瀬との話

「まさか、花音と雷門で再会するなんて思ってなかったよ。」
 一之瀬が爽やかに笑い掛ける。花音も一之瀬に頷き返し、「私も、かずくんが秋ちゃんと土門と知り合いだったとは。」と笑った。
 以前、まだ兄がジュニアチームで活躍していた頃、年に一度遠征と称してアメリカのジュニアリーグ選抜チームと練習試合を行っていた。一之瀬はそこで「フィールドの魔術師」と呼ばれ、卓越したボールコントロールを見せていた。
「最後に会ったのは5年前くらいかな?よく私だってわかったね?」
 遠征中は数日間滞在し、練習試合の他に合同練習や交流会なども行われた。それでも付き添いで行った花音はさほど参加せず、交流も少なかったはずだった。
「そりゃあ、花音は政によく似てるし。…それに、同い年の子だったから印象深かったんだ。」
 言われてみれば、2歳上の兄が参加していた頃なのもあって、年上の参加者が多かったように思う。特に、アメリカジュニアリーグの選抜選手は一之瀬以外皆年上だった。
「今は、花音も選手なんだね?」
 一之瀬が花音のユニフォームへ目線を向けて言う。花音は少し照れながら頷いて、「お兄ちゃんには遠く及ばないけどね」と溢した。
「でも、かずくんとチームメイトになれるなんて、光栄だよ。」
 屈託なく笑う花音に、一之瀬は内心ほっとする。
 一之瀬は先日、再会した花音に政のことを尋ね過呼吸にさせてしまったと後悔していた。あの後花音から謝られたが、むしろ謝るのは自分の方だと思っている。それでも笑顔で政の話題を出す花音に、少しだけ心が軽くなった。
「転入の手続きが終わったら、クラスメイトにもなれるみたいだしね。」
 花音の悪戯っぽい声に、一之瀬が「え?」と驚きを漏らす。
 花音は先日転校してきた鬼道が隣に、その前の転校生・土門が隣の隣のクラスに入ったのを知っていた。順番的に恐らく、一之瀬は花音のクラスに編入することだろう。
「改めてよろしく、かずくん。」
 花音が一之瀬へ手を伸ばす。一之瀬は花音の手を取り、「こちらこそよろしく、花音!」と元気よく言った。
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